ふたつのそら

    それは 永遠に 続く 夢の底。(モノローグ)

どこから来たのかも思い出せない。 誰かに呼ばれている気がする。 それが、温かい声なのか、冷たい声なのかもわからない。わずかな光が差し込む。 冷たい液体が頬を流れ、胸の奥に痛みが走る。 彼女はゆっくりと目を開けた。 祭壇上に置かれた眠りの箱は、開けられ 傍らには銀色の髪を持つ逞しい戦士が、険しい瞳でこちらを見ている。

「……目覚めたか。」その声は低く、どこか安堵しているようで、同時に警戒心も滲んでいた。次の瞬間、壁の向こうから轟音が響く。 空気が震え、施設全体がきしむ。 外から聞こえるのは、低くうねるおぞましい咆哮と、金属が砕ける音。

「くそ……間に合わなかったか!」 戦士は振り返り、背中の巨大な刃を引き抜く。床の振動が激しくなり、天井のひび割れから黒い触手が伸びてくる。 それは異様なほどうごめき、光を吸い込むように黒かった。「死にたくなければ、俺と一緒に来い。」箱が破裂し、冷たい泡が床に溢れ出す。 激しく揺れる足元がふらつきながらも、彼は手を伸ばした。 その瞬間―― 背後で、巨大な“未知”の目が、わたしを見ていた。    

 でも、おかしい      なにかがおかしい   とにかく全てがおかしいのだ…          

      第一話 始まりの歌   

 放課後、部室のソファーにリュックを放り出し、髪の毛を後ろで束ね腰をおろす。 

さぁ、やるか!と、気合いを入れリュックの中から携帯ゲーム機を取り出した。   私は強い……強いのだ。  しかも圧倒的に強いのだ。 呪文のように唱えて始まるいつものゲーム。指先は小気味よくコントローラーを操り普段と変わらない。  隣では、雀がお経のような音階で呟くように歌っている。昔から独り言のような意味不明な歌を口ずさんではいたがちょっと前から雀が歌うたび、妙な違和感を感じていた。    時間の経過と共に脳内に侵入した何者かが符号のような札を一枚一枚貼り付けている。そんなイメージが勝手に頭の中に湧いてくるのだ。 この妙な違和感の正体は何なのか?さっぱりわからない。今日は、いつもよりモヤモヤした状態でゲームをしていると 突然、視界が遮断され目の前が真っ暗になった。ほんの 一瞬の出来事だったが再びゲーム画面が映ると なんだ……これは、いったいどうなっている このゲームとは全く関係のない場面が展開されてしかも、自分の意思を無視するかのように指先が勝手に動く そんな状態の中、何より一番驚いたのはゲーム画面に映るキャラの姿だ。 似ているとかのレベルではなく…… 目を凝らして何度も確認したが間違いなく自分の顔だった。これは、ゲームのやり過ぎで頭の中がおかしくなってしまったのか……?っと 「……あのさぁ……思うんだけど……」ちょっと前からチュンが変な歌、歌うと、うまく説明できないけど、 なんとも怪しげな現象が起きてたよね。うち、たった今、漠然とした気持ちが確信に変わったわ。」  真美子が 「えっ、なに……チュンチュンの歌がどうしたって?」っとスマホをいじりながら胡散臭そうに真希を見る。 「ほら、うちって結構ゲームやるじゃん。」「あぁやるね。ほぼ廃人だよね。ってか、今も進行形でやってるじゃん。」 そう言ってゲーム画面を覗いて見る。 「何だか、可愛らしい動物がピョコピョコと動き回ってるねぇ。」「だろ…… 今はどうみても穏やかで平和な場面が進行中だ。ところがだ…… いいか、ここがキモで  いきなり画面が切り替わったと思ったらへんてこな箱の中で目覚めイケメン戦士みたいなお兄さんが隣にいて、デカい剣を引き抜くと   ちょっとカッコいいな…とか思ってポーっとしてると… そしたらさ……めっちゃ怖い目がこっちを見てるんだよ。そんでね、その戦士のお兄さんに手を握られて えっ…はずっ、とか微妙な思いを抱いて2人で逃げたわけさ。    しかも決定的なことがひとつ。そもそもが、こんなゲームじゃないはずだけど……」 興奮しつつも落ち着いた口調で体験した状況を伝える。 「はぁぁ? なに訳わかんないこと言ってるの?  馬鹿じゃないの……こりゃ完全にダメなやつだわ いきなりも何も……見えたものを脳内で処理してるから画像として見えるんだよ。あんた、ちゃんと目をあけて画面見てるの?脳内で妄想してるだけじゃないの?」真美子の言ってることは私でも理解できる。でもさっきの出来事は現実としか思いようがない。「でもな……歌の内容と見える画像に、まったく共通性がないように思えるのは何故なんだ?」「そんなこと私にわかるわけないでしょ!そもそも、あんたの言ってることは、ゲームのやり過ぎで頭の中が妄想で暴走しているとしか思えないから。」ほんと困ったもんだ……っと、再び冷ややかな眼差しを真希に向ける。 「妄想とか、してない、してない! マジ、勝手に始まったんだって!」「あのさぁ…… わかってると思うけど、ゲームのやり過ぎ。少し自重した方がいいよ。……ほんとマジで心配するわ。」  何だか、相手をするのがアホらしくなってきて、再びスマホをいじる。    「だから違うって……うち、なんにも妄想とか絶対してないから。」 あくまでも自覚は、ない!と言い張る真希に、さすがにイラっときた。 「あーぁ、もう! ちょっと貸してみ!」並んで座っている二人の間に割り込むと乱暴に真希からゲーム機を取り上げた。 そんな二人のやり取りを可笑しそうに見ていた雀に向かって「チュンチュン!新しい曲、スタート」と、乱暴に告げた。「えっ……いやいや、ムリ、ムリ、いきなり言われたってムリだって……」 でも険しい顔つきで、ゲーム機を握りしめ、こっちをジッと見ている真美子に向かって、はっきりとイヤだ!と、言える勇気はない。 「もう、しょうがないなぁ」そう言うとペットボトルの水をひとくち飲み大きく息を吸う。 目を閉じ大きな呼吸をして、意識を集中するとほんの短い時間で瞑想状態に入った。 ( ここは何処だろう?)風がカサカサと枝葉を揺らしジジジッ、ケラッケラッと虫と蛙の鳴き声が混ざった怪しげな音が、まるで笑い声のように薄暗い森の中に響く。 それが何だか懐かしく感じられ、どんどん森の奥へと進んで行くと、やがて道は途切れ月明かりに照らされキラキラ金色に輝く湖畔が目の前に現れた。あたり一面にはランプをひっくり返したような花が青白くボーッと光を放ち、時おり吹く風に揺れるとリーンッ、リーンッと澄んだ音色を鳴らす。 不意に足元に何がが触れた気がして思わず下を向くと不思議そうにこっちを見上げる一羽のウサギと眼があった。  何も考えることなくウサギを抱き抱え近くにあった大きな石の上に腰をおろす。 頭を撫でながら、「今日はいい満月だね。」と言うと膝から飛び降りたウサギは一目散に駆け出し森の中に消えた。 「あ~あ……行っちゃた」水面にボーッと映る月明かりをぼんやり見ていると、だんだんと瞼が重くなり眠りに落ちそうだ。冷たい風が頬を撫で、思わず瞼を開けた。 するとさっきのウサギがいつの間にか足元にいる。しかも何処からやって来るのかウサギはどんどん増え続け、雀を囲むように輪になった。 足元にいた最初の一羽が立ち上がると周りのウサギたちも一斉に立ち上がり、ケラケラと笑い出した。 「さぁ 音楽会の始まりだよ」その声が、あまりにも可笑しくて思わずゲラゲラと大声を出して笑い、両手で眼を塞ぐ。 「もういいかい?」   「まぁだだよ」    「もういいかい?」   「まぁだだよ」  「そろそろいくよ」雀が語りかけるように歌い出した。二人はその歌を黙って聴いていた。 しばらくすると、ゲームをしている自分を見ているもうひとりの自分がいるような気がしてきた。  ( このおかしな感覚はいったいなんだろう?)画像は、はっきりと目に映るのだが頭の中には真っ白と言うか何もない気がするのだ。 画像に何の変化も起きないのは、もしかして脳内で画像が処理されていない?いやいや……そんな馬鹿なことがあるわけない…… 実際、手にしたゲーム機には、やってるゲームの画像がはっきりと見えるのだ。  視覚だけが映像を認知するとかおかしいだろ……「あ〜あぁっ 何がなんだかさっぱり訳わからん……」 そのうち空虚な空間と心地よい香りが脳内を包み支配していく。驚いたのは、その香りがふっと漂い実際に匂いとして感じられたことだ。 ( 匂いだと……こんなことってありえるの? ) 確かめるように鼻の穴をクンクンと膨らませた、間抜け顔を晒している真美子を横目で見ながら 「お前……感受性が欠落してるんじゃないのか……   私なんか、不気味な森の中に飛ばされて青い目をした巨大なゴリラみたいな奴と睨み合ってる真っ最中なんだが!」 そういうと、武器を構えた仕草でVRゲームのように動いている。( おいおい……まさか目の前に映像が見えているんじゃないないよね……) いったいどんな風に脳内処理されているのか覗いてみたいものだ。         「おっと、いきなり噛みついてきたか!あんなの食らったら間違いなく即死だな。」 回転レシーブでもするかのように床に転がる様は、どう見ても大真面目にやっているとしか思えない。 「ってか、あんた毎回戦ってるわけ……戦闘民族かよ」こんな出来事があった後、三人は歌の持つ本当の意味を知らないまま新たな行動を起こしてしまう。  

       第二話  集う子 

 あれから雀の歌を検証することに夢中になり外出することもなく冬休みを過ごしていたのだが、結局、真美子には特別な映像が見えることは一度もなかった。 気分転換もかねて、三人は久しぶりに原宿に出かけることにする。 電車の中でも 「いったい真希と何が違うのかな?」「だから感受性が足りないって言ってるだろ」「真希に感受性とか言われたくないんだけど……あんた戦ってるだけじゃん。」「チュンチュンには何か思い当たることはないの?」「わかんないよ~私にも真希ちゃんみたいな戦闘場面は歌ってるとき出てこないもん。」 何だか、釈然としない気持ちを真希にぶつける。「この際、あんただけ頭の中がおかしいってことにしておくか。」そんな三人の会話を時々ねっとりした視線を向けて見ている乗客がちらほらいる。良し悪しは置いとくとして、三人は何処にいても少々目立つ存在だ。それは学園内でも同じであり色々と問題を起こす原因でもあるのだが。  特に何も買うでもなく街中をぶらついていると、お決まりのパターンがそのうち訪れる。 「なんだが後にくっついて来てる子がいるんだけど。」振り返ると何人かの女の子が明らかに三人の後を一定の距離を保ちながら歩いている。三人が立ち止まれば同じように止まり決して追い越そうとはしないし、話しかけてくることもない。 「あーあ、いつもの感じね。 電車からずーっとだ。」 「駅についてからは人数が増えたね。」真美子と雀は、特に気にするでもなく平然としている。 「チッ…これだからチュンと一緒に人混みに来るの嫌なんだよな。」 と、真希が舌打ちをしながら振り返る。 「今日は、あんた狙いの子もいるかもよ。チュンチュンは、リアルにアニメから飛び出してきた不思議キャラみたいなもんだからわかるとしても、あんたの女子を惹き付けるキャラは未だに理解できないわ。」 「やめろよ。うちだって意味不明なんだから……」そう言うと真希が、つかつかと女の子たちの所に行き、なにやら言っている。「別に被害も無いんだからほっとけばいいのに。真希ちゃんはホント気が短いよね。」雀が やれやれといった感じで、その様子を見ている。 「はぁ?あいつ、何か 受け取ってないか?」「だから毎回こうなるんだから、ほっとけばいいのに、何でわざわざ行くかな……荷物増えるじゃん。」( こいつもこいつで相変わらず感情歪んでるな……)両手に紙袋をぶら下げて帰った来た真希に「お疲れ様でした。真希ちゃん先輩はホント有能ですね。」っと嫌味ったらしく言う雀に全く動じることなく、「チュンこれ、お前さんへの貢ぎものだ!」と、紙袋を渡す。「あれ、真希ちゃんのは?」「い、いや、うちには特に何も……」なにやら怪しい……「あんたさぁ少しは」と真美子が言おうとしたら早速お決まりのパターンその2がやってくる。いかにも胡散臭い男が近付いてくると「ちょっといいかな。時間とらせないから」と言うと雀の顔を覗きこみ「君、すごく可愛いね。その目はカラコン?」と聞く。「よかったら素顔見せてくれないかな」怪しい者じゃないからと名刺を取り出す。「あー、急いでるんで!」っと雀が歩こうとすると、「ちょっと待って、ほんの少しでいいから話聞いてよ。」と腕を掴んだまま名刺を渡そうとした時真希がその手を振りほどき、名刺を取り上げると男の顔めがけて投げ捨てる。「おい、嫌がってんだろ。」と、二人を遮るように目の前に立ち塞がる。「何、するんだ!」と、男が近寄るや、腰辺りからピストルらしきものを抜き出すと男の喉元に突き付け、「どっか行けよゴミが!それとも一回死んどくか。」「マジでぶっぱなすぞ。」 っと 圧し殺した冷めた声で言うとあまりの迫力に悪態をつきながら逃げてしまった。その様子を先ほどの女の子たちが見ている。そのうちの一人が眼をうるうるさせながら 「あーぁ カッコいい…」と今にも崩れ落ちそうな姿勢で呟いた。「バカめ。マジムカつくわ。」と、指先でくるくるとピストルを回している。「あーぁ、またまたやっちゃいましたね、真希ちゃん先輩。」「あー、やっちゃったね……ところで、あんたさぁ……いつも、そんな物騒な物、持ち歩いてるの?」真美子がくるくる回るピストルを止めて言う。「いや、今日が初めてだけど。それより見ろ!この美しいフォルム。ヘッケラー&コッホのM2カスタム 欲しかったんだ。いいだろう!」と自慢をはじめた。「そういうことか」と女の子の方をチラッとみる。「そのヘッケラーなんちゃらはどうでもいいけど、そんなの持ち歩いてたらお巡りさんに捕まっちゃうよ。」「え、ただのモデルガンなんだけど」「それでもダメでしょ」不満そうな顔をして何かを言いたそうにしている真希に「巻き添えになったらイヤだから早く仕舞いなよ」と強い口調で言った。「わかったよ、また後でな。」そう言うと愛しそうにリュックにしまう。         断捨離しようか代々木公園沿いを渋谷方面に向かって歩いていると公園前にある多目的広場が人で溢れやけに騒がしい。入口に近づくとフリマ開催中の旗が見えた。以前からこの場所でフリマが開催されているのは知っていたが別段興味もなかったし、それが目的で出かけることもなかった。暇だったこともあり、フリマを覗いていくことにした。道路を横断して真向かいの広場に向かう。「うわぁ……何この人だかり。」三人は、思わず顔を見合わせる。奥の方までびっしりと埋め尽くされた出店スペースに大勢の買い物客。入り口付近で、この人だかりってことは中はもっとすごいのか?かき分けるように進むと何やらひときわ大きな声が聞こえてくる。「はいはい、掘って掘って また掘って皆さま掘りまくってくださいな!どれでも百円、何でも百円」と、めちゃくちゃ威勢の良いお姉さんが声を張り上げている。その姿につられお客さんがブルーシートの上に富士山のようにてんこ盛りに積み上げられた品物を先を争うようにして漁っている。「なんだが、すごいね……」その姿に圧倒された真美子が思わず真希の袖を引っ張った。 「前からこんなだった?」「覚えてないから……よくわからん」「あれっ チュンチュンは?」いつの間にか雀の姿がない。まさか迷子になったのかと、辺りを見回すが人混みに埋もれて確認できない。さすがに中学生にもなると大丈夫と信じたいが少し心配になってくる。何しろあのキャラだ。変なのに捕まってないといいけど。そんな真美子の心配をよそに「お願い、もっと安くして 」っと特徴のある聞きなれた可愛い声が聞こえる。「あっ!いたいた。何やってんの?」「今、お兄さんと交渉中」見るとしゃがみこんでサングラスらしきものを手にしている。「幾らなら買えるの?」困ったような顔をして雀に聞くお兄さん。「だから百円」どう見てもそんな値段とは思えない綺麗なサングラス。よく見ると有名なブランドロゴが「これ正規品なんだけど……」「お願いお兄さん……どうしても欲しいの」と、じっと見つめたまま品物を離さない。「参ったな……」しばらく考えた挙げ句「まぁ姉貴のやつだし百円でいいか、君、可愛いし」と妥協してしまった。「お兄さんありがとう」っと雀ににっこり微笑みかけられると「いやいやこちらこそ」 こちらこそっていったい何の挨拶だよ……っと思ったが、照れながらなんともだらしない顔を晒しているお兄さんに向かって似たようなサングラスを手に取ると「これはいくら?」と真美子が精一杯の微笑みを造りながら聞くとあっさり三千円と言われて落ち込む。「なんなの……この差別は」「まぁ気にするな いわゆる雀マジックと言うやつだ」 と、たいして慰めにもならない事を言う。「どう似合う?」と雀に聞かれ「あぁフレーム大きいし顔わかんなくて良かったね!」と適当に答えた。会場内を一回りしてめぼしい物を見つけると雀マジックを連発し、そこそこの戦利品を手にした雀は満足気だ。それにあやかって自分たちも買い物をする。「意外と、楽しかったね」「ねぇ今度うちらも出店してみない。」と、真美子が提案すると「やりたいやりたい」と雀が即答する「まぁ少しは小遣いの足しになるかもだしな」っと真希が言うと「だよね!」っと真美子が嬉しそうにニコニコしてる金が絡むとこいつの人格が変わるのは知っていたが、きっと何やら閃いたに違いない。「まぁ楽しければ何でもいいか。」こうして断捨離という名目のフリマ遊びを決行すべく計画を練った。

    第二話  集う子 あれから雀の歌を検証することに夢中になり外出することもなく冬休みを過ごしていたのだが、結局、真美子には特別な映像が見えることは一度もなかった。 気分転換もかねて、三人は久しぶりに原宿に出かけることにする。 電車の中でも 「いったい真希と何が違うのかな?」「だから感受性が足りないって言ってるだろ」「真希に感受性とか言われたくないんだけど……あんた戦ってるだけじゃん。」「チュンチュンには何か思い当たることはないの?」「わかんないよ~私にも真希ちゃんみたいな戦闘場面は歌ってるとき出てこないもん。」 何だか、釈然としない気持ちを真希にぶつける。「この際、あんただけ頭の中がおかしいってことにしておくか。」そんな三人の会話を時々ねっとりした視線を向けて見ている乗客がちらほらいる。良し悪しは置いとくとして、三人は何処にいても少々目立つ存在だ。それは学園内でも同じであり色々と問題を起こす原因でもあるのだが。  特に何も買うでもなく街中をぶらついていると、お決まりのパターンがそのうち訪れる。 「なんだが後にくっついて来てる子がいるんだけど。」振り返ると何人かの女の子が明らかに三人の後を一定の距離を保ちながら歩いている。三人が立ち止まれば同じように止まり決して追い越そうとはしないし、話しかけてくることもない。 「あーあ、いつもの感じね。 電車からずーっとだ。」 「駅についてからは人数が増えたね。」真美子と雀は、特に気にするでもなく平然としている。 「チッ…これだからチュンと一緒に人混みに来るの嫌なんだよな。」 と、真希が舌打ちをしながら振り返る。 「今日は、あんた狙いの子もいるかもよ。チュンチュンは、リアルにアニメから飛び出してきた不思議キャラみたいなもんだからわかるとしても、あんたの女子を惹き付けるキャラは未だに理解できないわ。」 「やめろよ。うちだって意味不明なんだから……」そう言うと真希が、つかつかと女の子たちの所に行き、なにやら言っている。「別に被害も無いんだからほっとけばいいのに。真希ちゃんはホント気が短いよね。」雀が やれやれといった感じで、その様子を見ている。 「はぁ?あいつ、何か 受け取ってないか?」「だから毎回こうなるんだから、ほっとけばいいのに、何でわざわざ行くかな……荷物増えるじゃん。」( こいつもこいつで相変わらず感情歪んでるな……)両手に紙袋をぶら下げて帰った来た真希に「お疲れ様でした。真希ちゃん先輩はホント有能ですね。」っと嫌味ったらしく言う雀に全く動じることなく、「チュンこれ、お前さんへの貢ぎものだ!」と、紙袋を渡す。「あれ、真希ちゃんのは?」「い、いや、うちには特に何も……」なにやら怪しい……「あんたさぁ少しは」と真美子が言おうとしたら早速お決まりのパターンその2がやってくる。いかにも胡散臭い男が近付いてくると「ちょっといいかな。時間とらせないから」と言うと雀の顔を覗きこみ「君、すごく可愛いね。その目はカラコン?」と聞く。「よかったら素顔見せてくれないかな」怪しい者じゃないからと名刺を取り出す。「あー、急いでるんで!」っと雀が歩こうとすると、「ちょっと待って、ほんの少しでいいから話聞いてよ。」と腕を掴んだまま名刺を渡そうとした時真希がその手を振りほどき、名刺を取り上げると男の顔めがけて投げ捨てる。「おい、嫌がってんだろ。」と、二人を遮るように目の前に立ち塞がる。「何、するんだ!」と、男が近寄るや、腰辺りからピストルらしきものを抜き出すと男の喉元に突き付け、「どっか行けよゴミが!それとも一回死んどくか。」「マジでぶっぱなすぞ。」 っと 圧し殺した冷めた声で言うとあまりの迫力に悪態をつきながら逃げてしまった。その様子を先ほどの女の子たちが見ている。そのうちの一人が眼をうるうるさせながら 「あーぁ カッコいい…」と今にも崩れ落ちそうな姿勢で呟いた。「バカめ。マジムカつくわ。」と、指先でくるくるとピストルを回している。「あーぁ、またまたやっちゃいましたね、真希ちゃん先輩。」「あー、やっちゃったね……ところで、あんたさぁ……いつも、そんな物騒な物、持ち歩いてるの?」真美子がくるくる回るピストルを止めて言う。「いや、今日が初めてだけど。それより見ろ!この美しいフォルム。ヘッケラー&コッホのM2カスタム 欲しかったんだ。いいだろう!」と自慢をはじめた。「そういうことか」と女の子の方をチラッとみる。「そのヘッケラーなんちゃらはどうでもいいけど、そんなの持ち歩いてたらお巡りさんに捕まっちゃうよ。」「え、ただのモデルガンなんだけど」「それでもダメでしょ」不満そうな顔をして何かを言いたそうにしている真希に「巻き添えになったらイヤだから早く仕舞いなよ」と強い口調で言った。「わかったよ、また後でな。」そう言うと愛しそうにリュックにしまう。         断捨離しようか代々木公園沿いを渋谷方面に向かって歩いていると公園前にある多目的広場が人で溢れやけに騒がしい。入口に近づくとフリマ開催中の旗が見えた。以前からこの場所でフリマが開催されているのは知っていたが別段興味もなかったし、それが目的で出かけることもなかった。暇だったこともあり、フリマを覗いていくことにした。道路を横断して真向かいの広場に向かう。「うわぁ……何この人だかり。」三人は、思わず顔を見合わせる。奥の方までびっしりと埋め尽くされた出店スペースに大勢の買い物客。入り口付近で、この人だかりってことは中はもっとすごいのか?かき分けるように進むと何やらひときわ大きな声が聞こえてくる。「はいはい、掘って掘って また掘って皆さま掘りまくってくださいな!どれでも百円、何でも百円」と、めちゃくちゃ威勢の良いお姉さんが声を張り上げている。その姿につられお客さんがブルーシートの上に富士山のようにてんこ盛りに積み上げられた品物を先を争うようにして漁っている。「なんだが、すごいね……」その姿に圧倒された真美子が思わず真希の袖を引っ張った。 「前からこんなだった?」「覚えてないから……よくわからん」「あれっ チュンチュンは?」いつの間にか雀の姿がない。まさか迷子になったのかと、辺りを見回すが人混みに埋もれて確認できない。さすがに中学生にもなると大丈夫と信じたいが少し心配になってくる。何しろあのキャラだ。変なのに捕まってないといいけど。そんな真美子の心配をよそに「お願い、もっと安くして 」っと特徴のある聞きなれた可愛い声が聞こえる。「あっ!いたいた。何やってんの?」「今、お兄さんと交渉中」見るとしゃがみこんでサングラスらしきものを手にしている。「幾らなら買えるの?」困ったような顔をして雀に聞くお兄さん。「だから百円」どう見てもそんな値段とは思えない綺麗なサングラス。よく見ると有名なブランドロゴが「これ正規品なんだけど……」「お願いお兄さん……どうしても欲しいの」と、じっと見つめたまま品物を離さない。「参ったな……」しばらく考えた挙げ句「まぁ姉貴のやつだし百円でいいか、君、可愛いし」と妥協してしまった。「お兄さんありがとう」っと雀ににっこり微笑みかけられると「いやいやこちらこそ」 こちらこそっていったい何の挨拶だよ……っと思ったが、照れながらなんともだらしない顔を晒しているお兄さんに向かって似たようなサングラスを手に取ると「これはいくら?」と真美子が精一杯の微笑みを造りながら聞くとあっさり三千円と言われて落ち込む。「なんなの……この差別は」「まぁ気にするな いわゆる雀マジックと言うやつだ」 と、たいして慰めにもならない事を言う。「どう似合う?」と雀に聞かれ「あぁフレーム大きいし顔わかんなくて良かったね!」と適当に答えた。会場内を一回りしてめぼしい物を見つけると雀マジックを連発し、そこそこの戦利品を手にした雀は満足気だ。それにあやかって自分たちも買い物をする。「意外と、楽しかったね」「ねぇ今度うちらも出店してみない。」と、真美子が提案すると「やりたいやりたい」と雀が即答する「まぁ少しは小遣いの足しになるかもだしな」っと真希が言うと「だよね!」っと真美子が嬉しそうにニコニコしてる金が絡むとこいつの人格が変わるのは知っていたが、きっと何やら閃いたに違いない。「まぁ楽しければ何でもいいか。」こうして断捨離という名目のフリマ遊びを決行すべく計画を練った。

      

     第3話 フリマデビュー 

 「荷物がくそ重いのだが!リュックにスポーツバックにキャリーってどんな罰ゲーだよ……」会場に一番近い原宿駅で降りる 「でも電車空いてて良かったね。」「おい!日曜日のくそ早い時間に電車が混んでるわけないだろ。そもそも電車っていう選択肢が間違いだろ。」 そう言って真美子を睨みつけた。「仕方ないじゃん。誰も車出してくれないし。」「家から近いのにタクシーでもよくないか」「私もそう思ったけど……真美子ちゃんがお金もったいないって言うから。」「もぅ!うるさいなあ とにかく着いたんだからいいじゃん。」愚痴を言う二人にキレ気味に言い放つ。「なぁ、ここからこの荷物持って歩くのか……」「ここまで来たら意地でも歩くわよ」三人は、覚悟を決めて代々木公園に向かうことにした。「もうダメだ……真希ちゃんお願いだから荷物一個持って。」途中で雀がへなへなと座り込んでしまった。「しょうがないなぁ……」と、雀のスポーツバックを自分のキャリーに強引にくくりつける。同じように重そうな荷物を持ち歩く若者らしき集団の姿が見えるが皆、フリマの参加者なのだろう「つ、疲れた。」ようやく公園前にたどり着くとバックの上に腰を降ろす。入り口付近では車から荷物を降ろす参加者がせわしくなく出入りしている。その様子を見て、やっぱり車がないと厳しいなぁ……と、今更ながらに思った。「はい、これ」と雀が二人にお茶の入ったペットボトルを渡した。 あぁ、うまい生き返るわ  半分近く一気に飲む周りを見ると開始時刻にもならないのにすでに商品を並べて買い物客とやり取りをしているグループや、なかには商品を出す前から荷物を漁っている人までいる。ひと息つくと受付をするため真美子が会場内に入った。 はじめてなので何をすればいいのかよくわからない。とりあえず受け付けに並び、事前予約した名前を告げ出店料金を払う。 場所を選んでくださいと言われると、大きな用紙に区画割された番号が振ってあり各々が好きな場所を選べるみたいだ。どこが良いとかさっぱりわからない。私の横に並んで場所選びをしていたお姉さんを、ちらっと見てその隣にした。受け付けを済ませ書かれた番号の場所を探すのだが会場が広い上に人で溢れていて目的の場所にたどり着けない。なんとか地面にチョークで書かれた番号を見つけようやく荷物から解放された。思ったより狭くて畳一畳分くらいのスペースだ。ブルーシートを取り出し敷くと、その上にとりあえず荷物を置く。先ほどのお姉さんは、前後二ヶ所分のスペースを取っていて五人グループで参加していた。「今日は、よろしくお願いします。はじめてなのでいろいろ教えてください」と挨拶をする。とても感じの良いお姉さんで聞けば高校時代の友達と参加しているとのこと、大学生の人もいた。「あなたたちは高校生?」「まだ中学生なんですけど。」「若いなぁ~ これはお客さんも大喜びだ。」と、笑っている。グループの一人が雀を見て、「あのぅよかったら一緒に写真お願いできないかな?嫌なら全然断ってくれていいから」と言ってきた。「全然オッケーですよ。」っと返答するとじゃあ私も と、撮影会が始まってしまった。お互いの距離感が一気に縮まると、お菓子やら飲み物の差し入れやらでまるでピクニックでもしているような雰囲気だ。「それにしても雀ちゃんは神秘的だね。一目で引き込まれてしまった。」と大学生のお姉さんが少し恥ずかしそうに言うと確かにと皆が納得している様子だ。肝心の商品はというと、品物を並べる前からお客さんが待ち構えていた。「えっ……マジか なんか凄いプレッシャー。予行練習とかないの?」と真希と顔を見合わせ狼狽えるが何てことはなくお客さんの正体は雀の追っかけで、あっという間に雀の私物はなくなってしまった。これには、隣のお姉さんたちも一様に「凄いな……」と呆れた顔をしている。雀効果は絶大だ。何しろ通りすぎる人は、雀を見て立ち止まりついでに品物を見て交渉が始まる。こうしてこの出店場所は客が途切れることなく目立つのか客が客を呼び大いに賑わった。なんだかんだで三人の持ってきた品物は、ほぼ無くなり隣のお姉さんたちからも 「何だかこっちが助けてもらったね。ありがとう」とお礼を言われ未開封のお菓子やら飲み物までもらってしまった。こうしてはじめてのフリマ参戦は大成功で終了する。「やっぱりこうなると思ったわ 雀マジックは絶大だ。小銭がいっぱいで正確にはわからんけど多分売り上げ凄いよ。」と真美子が嬉しそうに言う。「やっぱりって……お前そんなこと考えてたの?」「さすが真美子ちゃん、抜け目なくあざといね。頼りになるわ」「でしょう。こりゃ次もやるしかないでしょ。」意気揚々としている真美子に「さすがに歩きは止めような。」と真希が釘を刺す。「次は、お姉ちゃんに送ってもらうことにするわ。」「それなら問題なしだ。」こうしてフリマ遊びに嵌まってしまった三人は、代々木公園で開催される時には毎回参戦することになる。          心明学園 「おー寒っ……」「真希ちゃん おはよう。」「おはよう。昨日は楽しかったな。」冬休みも終わり、今日から学校だ。駅までの道すがら三人は昨日のフリマを振り返る。「チュンチュン作戦は予想以上に使えるな。」「真希ちゃんだって結構絡まれてたじゃん。」「あーあれか……なんだっけ?あの女子アナ またねっとか言ってたけど次もくるつもりか。」「あんたのことずいぶん気に入ったみたいね。年上殺しの魔性の女ってやつだ。」真美子が、菓子パンを頬張って口をモグモグさせながら真希を見る。「はぁ……言っとくがそんな趣向はないからな。」「まぁおかげで潤ったんだからいいじゃない。それより次はいつだっけ?」すっかりフリマ遊びにはまった三人は早速次回開催される日程を再確認する。「でもな……売る物が無いんだけど、いらない私物は前回でほぼなくなったぞ。」雀と真美子も同じ状態らしく、「家の不要品っていってもかさばる物は面倒だし家族の私物もなんだか微妙じゃない?」どうするか、しばらく思案していたが真美子が「そうなると学園の子達から寄付させるか参加させるかだね。まぁなんとかなるっしょ!」と、なにやら思いついたらしくほくそ笑み、こっちを見た。  

       心明学園

  心明学園は都内渋谷区にある中高大一貫の女子校である。真美子、真希は3年、雀は2年、いずれも中等部に在学している。とりあえず学力は置いとくとして、一応、お嬢様学校に分類される学校だが 日本には珍しくドイツに経営母体のある学校ということもあり生徒の人権に関わるような煩わしい校則は無い。制服姿で登校する生徒も多いが、単純にこれが一番、楽だからである。まぁ学生ってわかりやすいしね。もちろんブランドまみれのゴージャスな私服での登校も問題ない。人気はないけど。真美子と真希は親同士、仕事上での接点がある関係から濃密な家族間交流があり、真美子の姉がすでに在学していたため自然とこの学園に入学した。雀は、そんな二人を追いかけるように、この学園を選択する。家が近所で幼なじみの三人だが雀はこの地域で生まれたわけではなく小学校低学年の時転校してきた。周りの子供たちとは明らかに違う容姿。それ以前の生活もどこかミステリアスで、どこから来たのか聞いても 「お山の方から」と答えるだけ。母親も雀をそのまま大人にしたような容姿で神秘的な美人ではあるが口数も少なくどこか影のある人だ。父親の姿は、誰も一度として見たことがなく噂では日本にはいないだの、そもそも存在しない、とかどれも憶測だけで信憑性はまったくない。そんな家庭環境もあり大人たちは、雀ちゃんってどんな子?どこから来たの?家の人は何してる人?得体の知れないものには興味津々で詮索を始める。ましてや子供は配慮も遠慮もない分、残酷だ。ストレートに思った言葉を吐き出す。ゾンビだの悪魔だの怖いから近寄るな!陰湿ないじめも受けた。自分と明らかに違う容姿に人格をすんなり受け入れるのは、まだ未成熟な児童には無理があるのだろう。そのうち偽善ぶった大人が身勝手な愛情を押し付けうわべだけの信頼関係を築こうとする。そっとしておいて欲しいだけなのに。そんな毎日が鬱陶しくなって次第に自分の殻に籠る悪循環。出口のない部屋をぐるぐるとさ迷い、だんだんと追い詰められる。そんな中、真美子、真希の二人は、はじめから様子が違った。子供たちから、真真コン ままコンと呼ばれるボス的な存在。顔を合わすたび、「ようよう小悪魔、今日も相変わらず可愛いな。」と、抱きつき顔を擦り付けてくる。「やめて!」と、強く言っても全くお構い無し。毎回毎回それが続くと拒絶するのも面倒になってそのうち二人になついてしまった。まるで拾われた仔犬だ。おまけに、チュンチュンって 悲しいような嬉しいような呼び名までもらう。三人が学校内でもつるむようになると周りの子供たちの態度は一変した。こうして二人は、何があっても私を守ってくれるかけがえのない存在と成っていく。   歴史雑学研究会なんと形容すればよいのか。名目は歴史を散策して新たな知識を収得し、それを実践活動することで新たな発見に繋げる。要は、いかに快適な学園生活を送るか。これは非常に重要な案件であり、そのためには自ら部活を発足させ部長として君臨するのが一番では?と考えた真美子が設立した、いかにも真面目にやってます。みたいな名称の部活動である。部活と言っても、学校側による締め付け等は一切なく、ほぼ生徒の自主管理によって運営されていて、大学のサークルに近い活動である。そんな状態だから活動内容は、お察し通りで部員も似たような考えの連中が集まるのか次第に歴史はどこかに消え去り雑学の雑だけが独り歩きを始め校内ではガラクタ研究会、通称 ガラ研と呼ばれる有り様で、もはや別の部活だ。ただ雀効果なのか意外と大所帯で部員数は多い。  「はーい。皆さん聞いてください。」真美子がなにやら真面目ぶって喋り出した。「春になったら学年も上がり新入生も入学してきます。我々にも先輩としての模範を見せるべく行動が求められることでしょう。そのためには自己を振り返り見つめ直す必要があるかと。」まず身の回りを清め整然とした簡素な潔さが、うんたらかんたら。要約すると売る物がないから寄付、もしくは参加しろよ。と言うことだ。女子校にはいろいろな属性に分類される趣味人が数多く生息している。我が校も多分に漏れずなにかしらの趣味人がとにかく多い。異性に向ける情熱を間違った方向に舵取りしてしまったのか収集欲が半端ない。結果、物が溢れることになる。そうなると決まって言われるのは少しは片付けなさい。と言う親からの小言。真美子のもくろみは的を得ており「何だか面白そう……」と、参加表明をする部員達もいて予想以上に売り物が集まりそうだ。「なんというか……これは世間一般的に詐欺とか言われるやつでは…。」「はぁ…なに言ってんの。私は救いの手を差しのべた救世主みたいなものでしよ」「イヤイヤ、救われたのは我々じゃん」

   「もう、うるさいな、とにかく次回も稼ぐわよ」

         

         第4話 冴えない おっさん 

 「おー寒っ」「やっぱり朝早いと、いちだんと寒いね。」「昨日、真美子ママから、お弁当作るから何も持ってこなくていいって連絡あったけど真希ちゃん聞いてる?」「あーぁ、私にも電話あったよ。」そんな会話を交わしながら二人が真美子の家に到着すると、すでに出発準備を終えたのか車の側に真美子達の姿が見える。「おはようございます。」二人が真美子の姉と母親に挨拶をする。「おはよう。相変わらず二人とも可愛いわね。真希ちゃん少し大人っぽくなったんじゃないの。」と母はニコニコしていて、すこぶる機嫌が良い。 そんな母を横目で見ると何やら大きな風呂敷包みを手にしている。「ねぇ……それってなに?」と聞くと「あっ これ 大したものじゃないから気にしなくていいのよ。」っと軽くあしらわれる。何だか釈然としないが「じゃあ行ってくるね」真美子が母に告げると 「あっ!真希ちゃん。これこれ」っと、大きな風呂敷包みを車の窓越しに真希に渡す。  「お弁当作ったから、皆で食べてね」「はい。昨日はわざわざ連絡していただき、ありがとうございます。」朝早くからなにやらごそごそしていたのは、これか。て、昨日ってなんだ?「ねぇ、連絡って何よ?」と、母に聞く。て言うか……隣にいる娘に渡さず、わざわざ窓越しに真希に渡すとは、この母は何を考えているのか……「お姉ちゃん運転気をつけてね。真希ちゃん雀ちゃん二人とも変な人に絡まれないでね!」 と……娘を気にかける様子は全くない。「まぁ行って来るわ。」と告げると「あんたまだいたの……早く乗りなさい。」とまるで邪魔者扱いだ。「はいはい」と、助手席に乗り込み「なんかママさん、おかしくない?」と姉を見る。「あ〜ぁ、最近二人にかまってもらえないから尚更だな。まぁママさんも青春したいのだろうさ。」「青春って……意味わからん」真希に改めて「昨日の連絡って何よ?」と聞く。「あぁ、ママさんがお弁当作るから手ぶらで来てね。みたいな」「ええっ……そんな話聞いてないし。」前から思っていたのだがママさんの真希に対する態度はいつも明らかにおかしい。 思い当たる節があるとすれば小学生の頃、家族で帝国ホテルに行った時、最上階のラウンジで見た光景。 花束を持った人たちが大勢、女の人を取り囲んでいた。幼いながらその集団の雰囲気がなんだか妖しくて私がアニメのキャラに夢中になってる時と同じものを感じた。そう言えばあの時……母も同じように、うっとりとしていたような……今ならわかるが、あれは歌劇団の女優さんで男役だ。 なるほど……母にはそういう性癖があったのか。と、今更ながらに理解した。それにしても真希とは……こいつの本質を母は知らないようだ。と、内心ほくそ笑み後部座席の真希に 「ママちゃんが今度泊まりにきてねって言ってたわ。」と適当なことを言う。「あーあ まぁ気が向いたらな。ママさんにもお弁当のお礼改めて言っといてくれ。」「はい、はい、了解。」よし、その時が来たら、じっくりと観察してみよう。代々木公園に到着すると姉が「帰りはどうする?」と聞いてきたので「多分荷物無くなるから大丈夫。だるかったら連絡するわ、何ならお姉ちゃんも来る?」と誘うが 「あんたらと居ると面倒な事に巻き込まれそうだから止めとくわ。」と即答された。「面倒って何よ……まるでうちらが疫病神みたいじゃん」「特に原因は、お前な 」と、真希に言われる。 「チュン着いたよ。」真希に体を揺すられると「あ〜あ、眠い 」と、両手を頭の上で伸ばした。この娘は車に乗ると本当によく寝る。赤ちゃんかよ今日は天気も良くてフリマ日和だ。入り口に何人かの見慣れた顔がある。「おーい おはよう 」「随分早いね 」真美子が瑞穂たちに、声を掛ける。「初参戦だから変に気合入っちゃってさ。」雀も同級生の子たちとじゃれ合っている。皆に手伝ってもらい車から荷物を降ろし、とりあえずは、受け付けを済ませる。前回で要領はわかっているので、人数が多い今回は3か所分のスペースを予約しておいた。明らかに雀目当ての子たちが少し距離を置いて様子を見ている。それにしても、あの子達は何処から情報を得ているのだ?ただ今回は学園の子たちもいるので、いつもより尚更、遠慮がちだ。さっさと準備を済ますと早速、雀目当てのお客がやってきてそれに釣られた一般客も女子中学生軍団の勢いに押されて商品を次々に購入していく。真美子は、誰のものであろうと雀を指差し 「この娘の私物なんであんまりお値下げできませんけど……すいませんねぇ、いっぱい買ってくれたらオマケ付きで~す。」と、売りさばいていく。 商品の良し悪しなどどうでもよくて、滞在時間を確保するためにとにかく買うことが最優先極端な話、その辺に落ちている石ころさえ雀が握っていれば売れるんじゃね……みたいな勢いだ。 なかには商品そっちのけで話しかけてくる無粋な輩がいるが無視するかあまりにしつこいと真希のイライラが暴発する。あっという間に時間が過ぎ、売るものがほとんどなくなってしまった。 「真希から聞いてはいたが、雀効果とやらはすげーな」「真美子もある意味すげーわ……あの押しの強さは、さすがに恥ずかしくて真似できんわ。」「ちょっとちょっと、まるで私が羞恥心のかけらもないみたいじゃん」「違うのか? 」瑞穂がそう言って笑いながら真美子に空のペットボトルを投げた。「あぁ、ありがとね。」お客さんも途切れ一段落つきようやくまともな休憩が取れそうだ。       冴えないおっさん真希が 「ちょっと散策がてら飲み物買ってくるわ。」と、言って皆の注文を聞いた。 会場内をぶらぶらしていると5ブース位の広々としたスペースを使い乱雑さだけが、ひときわ目をひく店が目にはいる。 店主らしき男は、頭ボサボサ、なんだかボーっとした虚ろな目をした冴えないおっさん。それが真希の感じる第一印象だった。 ただ、がらくたにしか見えなかった売り物には興味を惹かれた。 軍の放出品だろうか?いろいろな国の軍服に戦闘服、戦場で使う装備品やジャンクなパーツ、ライフルのスコープや日本刀の鍔に浮世絵、コスプレイヤーが喜びそうな製作パーツとか変わった品揃えがてんこ盛りで値段も安く掘り出し物もありそうな期待感が膨らむ。 サバゲーで使えそうなハンドガン用のホルダーとかヘルメット、ゴーグル、おっ….これ、うち愛用のアバタンに使えそう、おいおい….ガスマスクまであるじゃないか!やるな!おっさん!あれこれ妄想しながら夢中になって品物を漁る。とりあえず漁った品物を傍らに積み上げ、あっ….そういえばマシンガン用のラックないかな?と、掘り返してみるが大量の品物に埋もれてしまって、お目当ての物を探し出すのも一苦労だ。 四つん這いになってブルーシートの上を這っていると後ろから、聞き慣れた声がする。 「真希なにやってんの?いつまでたっても帰って来ないから探したわよ。」振り向くと二人が仁王立ちで睨んでいた。「あれ?まだ終了時間には早いよね?」 「品物がほとんどなくなったから放置してきた。まぁ誰かしら店番いるから平気でしょ。」 「で、なにやってんの?」再び二人が冷ややかな眼差しで見下ろす。「なにって、買い物だけど。」あーあぁこいつ平然としててなんかムカつくわ。飲み物はどうした……四つん這いのまま、戦利品をいとおしそうに抱え込む真希を見て雀が、「真希ちゃん獲物を捕らえた肉食動物みたいでなんだか可愛いね。」と、スマホでパチリ!!「おい、やめろ!」っと真希が言うのを無視してアップでパチリ!!「見て見て可愛いいぃ!」って…… それを私に見せられてもな…… そもそも雀の可愛い基準がいまいち理解できないし。 あっ….真希ってペットじゃん….。と気がついた。「お前らこそなにやってんの?他のお客さんに迷惑だろ。」背後で声がするので振り向くと冴えないおっさんがなにやら言っている。真美子がすかさず、「お客さんなんてどこいるの?」と大袈裟に周りを見回し、「あっ!うちらのことか!それならお構い無く!」と店主に噛みつく。「誰?このおじさん?」と雀が追い討ちをかける。だが雀の顔を見て 「あれっ?おかしいな?お客いねーな?どこ行った?」「どこって始めからうちらしかいねーし、何言ってんの?」すると真希が「マシンガン用のラックありませんかね?」と、店主を見上げて尋ねる。「ハイハイ、マシンガンね。」「おい、うちらを無視すんな。」真美子がおっさんに向かって言い放つが全く眼中にないようで「あーラックね!どっかに有ったな?ちょっと待ってね….おじさん頑張って探しちゃうからねぇ。」と同じように四つん這いになって探し始めた。オエエェ……キモっ!あり得んな!このおっさん。「あっそうそう、ガスプロのXDMにあうグリップもないかな?」「おっ、なかなかの通だね。確かこの辺に埋まってたような」「あったあった!このグリップでいいかな?」っと真希に見せる。それを手に取り、握り心地を確かめ、「これ最高かも」「これってM16サブマシンガンにも使えますか?」「どこのメーカー? 」「マルマルの」「少しだけ加工すれば大丈夫かな、あと使えそうなグリップはどこだっけ?どっかに、良いのがあったはずなんだよな……」そう言いながら更に3個ほど探しだし得意気な顔をして真希の目前に差し出した。 「おじさん、本体は無いんですか?」「ごめんごめん、規制があってここには持ってこれないんだよ。そうそう店にあるから一度遊びにおいでよ。カスタムしたやつとかいろいろマニアックなものもあるしね。」なんだか専門用語を交えながら楽しそうに話し込んでいる。これだから武器オタは….女子中学生が、がちサバゲーって….こいつの将来大丈夫か….。二人の呆れた会話にうんざりしてきた。雀はといえば、そんな二人を面白そうに写真に納めている。 「ちょっと飲み物買ってくるわ。」「じゃあ、うち紅茶レモン宜しく。」四つん這いになったまま顔も上げずに注文しやがった。「真希ちゃんなんだか楽しそうだね。」「波長が同じなんじゃない。でもあの人チュンチュンの顔見たら態度変わったよね….。」「それは、きっと私に魅了されたんだ。」満載でもなさそうな素振りで大袈裟に両手を広げ頷いている。「まぁあの手のおっさんは、チュンチュンみたいな子好きそうだしねぇ….」「まあまあ良いではないですか。それに悪い人には見えなかったよ。」慣れた足取りで人混みを避けながら売店横の自販機に着く。「真希は紅茶レモンだっけ….って売り切れだし。面倒だからなんでもいいや!」っと適当に目についたペットボトルのボタンを押した。売り場に戻り、「はいよ!とペットボトルを渡す。」「違うじゃん!」っという突っ込みもなく、ありがとうと素直に受け取る。「あれ?っていうか?何だか戦利品がえらく増えてないか?」足元には大きな買い物袋が二つ。そんなに金持ってるはずないし、ウーン、これはおかしい?すると、「チュンちょっと、お願いあんだけと….このおっさん!じゃなくて玄さんとツーショット頼むわ。」やっぱりこうきたか。雀は嫌がるでもなく、むしろ楽しそうに玄さんと呼ばれるおっさんに、「違う違う!こうでしょ!はい!ポーズと、」あれこれダメ出しをしながら撮った写真を見ては、「あははっぁ笑える!もう一回いくよ!」とか「真希ちゃんも一緒に撮ろうよ」と誘ったり。珍しいなチュンチュンがあんなにはしゃぐなんて….。撮影会も終わり、「いやぁ雀ちゃん厳しくて!でもとっても楽しかったよ。」「うちも楽しかった。」すでに二人はすっかり打ち解け仲良しになっている。「玄さん、ありがとねー」と、ニコニコしてる真希も相当なものだ。 この時が、玄と3人の出会いの始まりだ。「玄さんって何やってる人なの?」「古物商とか言ってたけど?店舗もあるらしいぞ。住所教えてもらったから今度3人で行ってみるか。」真希から受け取った名刺を見て「ここなら家からも遠くないね。近いうち学校帰りに寄ってみるか」「うん。行きたい行きたい!」雀が即答する。「あんたたち随分あの人、気に入ってるね。」「結構楽しいぞ。あれは。」あれって….この時点で人扱いしてないのは問題だと思うけど….まぁ雀の言うように悪人とは思えないし、どちらかというとお人好しと言うか単純というかまぁわかりやすい性格ではある。ただ、うら若き少女と一緒になってはしゃいでるのは大人としてどうなの?とは思うが、二人に反論されそうなので聞くのはやめた。             音楽会のきっかけ「そういえばお腹すいたな。」時間を見れば、とっくにお昼を過ぎている。フリマに夢中なのか誰も食事をしていなかった。「じゃ噴水広場にいこう。」持ってきた品物も、残り少なくなってきたので早めに店じまいをして向かいの公園に皆で移動した。噴水池の近くに落ち着き、各自が持参した弁当を広げる。雀が「大勢だと遠足みたいで楽しいね。」と同級生の子たちが持ってきたお菓子を摘む。真美子が母が作ったお弁当をひろげると「ずいぶん豪勢なお弁当だな。どうしたの?」と、瑞穂が聞いた。まったく無駄に張り切っちゃって、おせち料理じゃあるまいし何段重ねだよ……「真美子母さんの力作だね。色とりどりでほんと美味しそう。」雀がいただきますと言って真っ先に箸をつける。「マジ美味しいわ。うーん、次はなにを食べようかな。」雀が鼻歌まじりにリズムを刻みながら料理を物色している。「そういえば聞いた事なかったけど、チュンチュンってどうやってあの変な歌作ってんの?」 真美子が弁当をパクつきながら聞いた。「真美子先輩、変な歌ってなんですか? 」興味津々に皆がこっちを見ている。実は雀の歌のことは秘密にしているのだ。「あぁ……まぁいろいろあってね、そのうちわかる時がくるよ」と誤魔化した。「……どうやって作ってるんだろ?」 幼い頃の記憶が甦る。奥深い山里の集落、森の中を進むとブナの大木に囲まれひっそりと佇む小さな神社。幼い頃いつもこの場所で、ごっこ遊びをしていた。周りに友達はいなく、いつも一人きり。でも誰かが隣にいるような気がして寂しいとか全然思わなかった。風が揺らす森の音、小さな沢で泳ぐ魚たちイモリやカエルに鳥の声、たまにやってくる動物たち。天井に居座る龍神、壁に描かれたいろんな神様。勝手に溢れ出るメロディにのせて私と遊んでくれた。 「物語に出てくるみんなが歌ってくれるんだ。」「それって誰なの?」  「うーん……ンッ、誰って?とにかくみんな。」そう言ってにっこり微笑む。「あの変な現象が起きる時も?」「あれは、特別な物語が始まった時、起きるみたいだけど。それも自分で考えてる訳じゃないんだ。勝手に溢れでる?みたいな」「特別な物語ねぇ……こりゃ到底理解できないわ。」「実際に歌というより昔話に出てくる語り部みたいな長老さんがおとぎ話を聞かせる感じだったな。」「チュンが思いつめた顔つきで歌いだすとヤバいからな。あのバトル中の快感は中毒になりそうだ。」「バトルは知らないけど……あの原始メロディみたいなおかしな口調で歌われると確かに奇妙な陶酔はあるわね。」「まるで古代のラッパーだな。」「あのさ、一度楽器の伴奏とかつけてやってみたら。」真美子が唐突に提案する。「楽器ってどんな?」と、雀がいち早く反応する。「小さな太鼓とか笛で、よく映画とかで古代の人が火を囲んでドントコドンドコやりながら踊ってる場面とか見るじゃん。持ち運びも楽そうだし。」「持ち運びって……まさかここでやるのか?」真希が箸で座っている場所を示しながら聞いた。「うん!ここがいい!ここに決定!」雀が太鼓をたたく仕草をしながらはしゃいでいる。あっけに取られて三人の会話を聞いていた部員たちだが一体何の話をしているのか、さっぱり理解ができない。瑞穂が真希に、「バトルって何のことだよ?」と再び聞いた。「ちょっと説明するのがムズいんだよな。なんか馬鹿にされそうだし。」「そうだ、ここにいるメンバーも一度体験してみたら何かわかるんじゃないの?」真美子がひらめいた様子を見せる。「実際お前さんには何も起きないしな……機会があったら一度検証してみるか」「春休みも近いしね」「もうすぐ春休みかぁ……何だかあっという間で卒業とか実感ないわ。」「春休みが終わったら高校生….なにかしら変化はあるのかな」「まぁ今のところ中学の延長みたいなもんだからな。劇的な変化は期待できないな。」3人の通う心明学園は女子校だ。そう女子校なのだ!ここが問題で男子がいない!つまり….ときめきがない!ドキドキしない!恋に目覚める青臭い青春は何処へ行った!という環境にあるわけで。「チュンはうちらと離れたら寂しいだろ。」「同じ敷地内だし、あんまり感じないかも?」「それにこの子達とは一緒だし。ねぇぇ~と」言って皆んなして抱き合っている。「まぁまぁ、仲の良い事で何よりだわ。」「って言うかほとんど区別つかないじゃん。学食一緒、部活おんなじ、生息地域が少し離れるだけで。」「ですよねぇ……」「はああぁ….校内での追っかけはまだまだ続くというわけだ。」真希が大きなため息をつく。「じゃあ、もしかしてあのおっさんも?」「あーぁそれは、あり得るな。」雀は二人の会話を聞きながら、一緒にいられて幸せだよ。これからも雀を守ってね。と心の中で呟いた。「何ニヤニヤしてんの?気持ち悪いなぁ。」「ふふふっ……ちょっとね。」と言って二人の手を握った。こうして三人の音楽会が幕を開けることになる。  

       第5話 玄ちゃんは、小金持ち 

 あの日、三人組の少女達に出会った後、玄はフリマ仲間たちから質問攻めに合う。

特に、加奈子たちの女子グループからは玄ちゃんだけズルい、雀様と話すなんて……ましてや写真まで一緒に撮るとか絶対許せません。 もう日本から消えて!顔も見たくないわ……など。意味のわからない罵倒めいた言葉さえ投げかけられた。どうやら、雀ちゃんと仲良くなったことが問題らしい。確かに、神秘的な不思議少女であることは認める。俺も目があった瞬間に引き込まれた。しかしだな、男から言われるなら、その気持ちも判らないでもないが、女子勢にここまでヤキモチめいた態度を取られると戸惑ってしまう。大して年も変わらない少女同士、普通に話せば良いのにと加奈子に話したところ友達感覚とか絶対無理と言われてしまった。そう言えば加奈子たちは、なぜ雀ちゃんを知っているのか?初めて会った日から数日後、学校帰りの三人が店にやってきた。 代官山の外れにある閑静な住宅街、住所的には目黒区である。近所には著名人の屋敷も数多く存在する。そんな一等地にある古いけど3階建て部屋数12のマンション。その一階に店舗がある。看板には古物骨董 玄時屋と書かれている。それも貸し店舗とかではなく自前の店。何よりマンション全てを所有しているのだから。要は親の遺産であり、玄時屋の社長である。当然、賃貸収入なるものがあるわけで….。ってことで本業の古物商は、言ってみれば個人の趣味である。つまり道楽というやつ。本質がお気楽なので儲けようなんて気持ちはこれっぽっちもない。フリマも遊びの延長で、楽しいからやっているだけである。「ここだね。」「そうだな…ってこんなとこお客さん来るのか?」真希がマンションを見上げて言う。「来ないでしょ。」ボロすぎる……これが3人の第一印象である。「それにしてもレトロな建物ね。」「蔦とか草が壁に貼り付いてるし…..ここ、人住んでんの?」「一応マンションっぽいし場所だけはいいから住んでるんじゃないのか?」「私は、こういう雰囲気好きだな。」「ほんとチュンチュンって昔から廃墟っぽいの好きだよね。」「うん。なんか落ち着くんだよ。」「しかしまぁ….店もボロいな…こりゃ 建物ごと古物だ。」3人は周りの目を気にするでもなく店舗前で好き勝手なことを話している。「おい!何やってんだ….と頭上から声がした。」見上げると屋上らしき場所に人がいた。フェンスから乗り出すようにしてこっちを見ている。 「あっ….玄ちゃんだ。遊びに来たんだけどぉぉ!」大声で雀が返答した。「今降りるから中で待ってなよ!」言われたとおりに、いろんな彫刻が施された観音開きのくそ重い木造の扉を真希が力任せに開ける。「どこから持ってきたんだよ….この扉….。」薄暗い店内にはディスプレイもくそもなく品物がまとまりなく散乱している。まるでフリマでの出店模様がそのまま引っ越してきたようだ。中央に樹木の年輪が模様になった丸っぽい大きなテーブルと椅子があったのでとりあえず座る。ずると、どこから現れたのかテーブルの上に大きな猫が飛び乗ってニャオーっと鳴くと雀の前で立ち止まりお腹を見せて寝そべった。その猫を撫でながら、「ふぅーん。君は男の子なんだ。」と肉球をプニプニしだした。「この子の名前はニギにしよう。」「しようって….勝手に名前つけていいのか?」「だってこの子に名前はないもん。」「なんでそんなことわかるの?だって店の中に居るんだよ….どう見ても玄ちゃんの飼い猫でしょ。」「いいのいいの。ねぇニギ。」と言って頭を撫で抱き上げると今度は膝の上においた。呆れた様子で雀を見ると、「真希ちゃん頂戴」っと手を出す。「あーはいはい」っと、常に持ち歩いている非常食の魚肉ソーセージをリュックから取り出した。「ニギ食べよっか」と言って自分のかじり欠けをそのまま口元に差し出した。「待たせて悪かったな。ん…?」珍しいな…こいつが大人しく抱かれてるなんていつもは、嫌がって逃げ出すくせにそうなんだ。飼い猫に嫌われるなんて可哀想な人と、真美子が言うと飼い猫?違うから、こいつ店の前で雨宿りしてた野良だから、悪さもしないから好きにさせてるだけで。じゃぁなまえは?そんなもん無いけど。だから、この子の名前はニギだって。ねぇ~ニギそう言って顔を、くっつけて抱き上げた。そんな雀の様子をデレデレしながら見ていた玄がまぁお好きなのどうぞ、とレジ袋に入ったお菓子やら飲み物をテーブルに置いた。ここに住んでるの?お菓子に手をのばし真美子が聞く。まぁなえっ……マジで、この汚いじゃなくて乱雑なスペースのどこで寝るのと辺りを見回す。いやいや、寝てないから。ちゃんと部屋あるからだよね。さすがに寝ないか。じゃぁ見えない所に隠し部屋があるんだ。いや、そんなの無いけど。て、言うか何か勘違いしてないか?普通に考えて、店の中で生活しないだろ。じゃぁ、このマンションに部屋借りてるんだ。借りているというか、所有してると言うか まぁそんな感じだ。おい、嘘は駄目だぞ。真希が棚に置いてある銃を玄に向ける。駄目ですよ。玄ちゃん。ねぇニギっと雀が続く。あー面倒くさ。ちょっと着いてきて。そう言うと、店を出てマンションの入口の階段を上がる。エレベーターないの。ないね。珍しいな…こいつが大人しく抱かれてるなんていつもは、嫌がって逃げ出すくせにそうなんだ。飼い猫に嫌われるなんて可哀想な人と、真美子が言うと飼い猫?違うから、こいつ店の前で雨宿りしてた野良だから、悪さもしないから好きにさせてるだけで。じゃぁなまえは?そんなもん無いけど。だから、この子の名前はニギだって。ねぇ~ニギそう言って顔を、くっつけて抱き上げた。そんな雀の様子をデレデレしながら見ていた玄がまぁお好きなのどうぞ、とレジ袋に入ったお菓子やら飲み物をテーブルに置いた。ここに住んでるの?お菓子に手をのばし真美子が聞く。まぁなえっ……マジで、この汚いじゃなくて乱雑なスペースのどこで寝るのと辺りを見回す。いやいや、寝てないから。ちゃんと部屋あるからだよね。さすがに寝ないか。じゃぁ見えない所に隠し部屋があるんだ。いや、そんなの無いけど。て、言うか何か勘違いしてないか?普通に考えて、店の中で生活しないだろ。じゃぁ、このマンションに部屋借りてるんだ。借りているというか、所有してると言うか まぁそんな感じだ。おい、嘘は駄目だぞ。真希が棚に置いてある銃を玄に向ける。駄目ですよ。玄ちゃん。ねぇニギっと雀が続く。あー面倒くさ。ちょっと着いてきて。そう言うと、店を出てマンションの入口の階段を上がる。エレベーターないの。ないね。最上階というか屋上に出る扉を開けると、目の前に大きな部屋らしき建物がある。これが家?まぁな鉢植えの観葉植物が置いてあったり洗濯物が干してあったり確かに生活感はある。玄に促されて部屋に入ると、二十畳以上はありそうなワンフロアに巨大なテレビと座り心地の良さそうなソファ、壁には現代アートがいくつも飾られ、なかなかおしゃれな空間だ。真美子が質問しまくる。結婚してるの?いや、独り身だが彼女は、いるのいやいないけどえっ、まさかの……あのさぁ、パートナーがいなけりゃここに住んじゃいけないように聞こえるんだが……「だってさ、どう考えてもおかしいでしょ。」「そうだな。」「当然ですね。」追い打ちをかけるように二人が頷きながら言う。「あれ….もしかして俺ってお前たち以外にも、そんな風に思われてるのかな?」「多分ね。」「気づけよ。」「お馬鹿さんですね。」こんな小娘たちに散々な言われようをしても、どこかで自覚している自分が情けない。「でも玄ちゃんだから、まぁ許せるか。」真希が大して慰めにもならないことを言う。[まぁ……って」こうして3人のお守り役をしてるわけで….猫? あぁニギね。勿論お守りしてますよ。

        第6話 初めての音楽会

 すっかりフリマ遊びに゙嵌ってしまった三人。どうやら雀の情報は推し追っかけと言ってもいい子達の間で共有されているらしく常にマークされている状態だ。「なんかさ、だんだんと取り巻きが増えてるように思うのはウチだけか?」真希が、少女たちの集団に目をやりながら言った。「実際、増えてるね。まぁ売り上げに貢献してくれる訳だし別にいいじゃん。」 「でもな、音楽会どうする?一緒に付いてこられたらマズくないか……」今日はフリマを早めに切り上げ、噴水広場で歌の検証をする予定なのだ。「それは、駄目かも。」万が一、自分の歌のせいでおかしなことになっても困る。と、雀は気にしているようだ。「じゃぁ、どうするの?中止する?」真美子がそう提案するが、「それは絶対嫌だ!」と駄々っ子のようにすね始める。「でも……なんで男女の比率がこんなにも片寄ってるの?極端過ぎじゃない?」「うちに聞かれてもな……まっしょうがない……」 真希はそう言うとツカツカと少女たちの集団に向かっていく。「あのさぁ フリマ終わったら大事なプライベートな用事があるから今回は、おとなしく解散してくれ。特にチュンが拗ねてるし嫌われたらイヤだろ。」と、珍しく冷静な態度で説得している。そして雀を見て何かを促すような仕草をする。真美子は、(あれ意外、真希にこんなスキルがあるとは……)と、驚きを隠せない。雀もその様子を見て援護するかのように、「皆んな!ありがとうね。」と、ニコニコしながら手を振っている。今まで、雀にこのような振る舞いをされたことのない少女たちは一斉に頭を下げ解散してしまった。「ヤレヤレ、慣れないことして疲れたわ。」「あんたが平和的に解決するとは一体どうしたの?」「だって、音楽会であんな姿を見られてみ……ガチで恥ずかしいだろ。お前はいいよな。ほぼ平常だし。だからチュンにすがろうと思ってな。それに、うちが武力しかない脳筋みたいに思うのやめてくれないかな」「だってさ、あんたの行動パターン、散々見てきてるんだから仕方ないじゃん。」雀が、「それには激しく同意します。でも、真希ちゃんはやっぱり頼りになるわ」と抱きつく。「良い機会だから、これからは理論武装もよろしくね。」と真美子がにやりと笑った。向かいの公園内にある噴水池の畔に落ち着くと用意した楽器を取り出した。「さてやるか。」おもむろに真希が太鼓を叩き出した。それに合わせ真美子が笛を奏でる。どこか神楽を思わせる和風な音調が周囲に響く。目を摘むって聞いていた雀が語るように歌いだした。歌の内容は神話の世界での物語らしいが覚えていたのは始めの箇所だけで次第に意識が遠ざかり真希と真美子は自分の世界に引き込まれる。フッ、っと目が覚めて意識が戻ると手にした楽器は見当たらず真希は仁王立ちで真美子は空を見上げボーッとしていた。「あーぁ 参ったな…… まさかの陰陽師かよ。」真希が開口一番 「なんだかよくわからん化け物を召喚してしまった。思い出すとゾッとするわ。あいつ夢とかに出てこないよな……。」どうやら平安時代あたりに行って巨大な人食い鬼らしきやつと一戦交えたようだ。 真美子は満開のお花畑で昼寝をしているような気分でひたすら気持ちがよかったとか。そんな中、雀は平然としていて、「ねぇ、前と比べてどうだった?」と聞いてくる。「うちは……」と真希が言おうとして、雀を見た時、一瞬凍りついた。おいおい、ガチか…… いつの間にか自分たちの近くに少女たちが祈りを捧げるようにしてひざまづいている。いつから居たのかさえ二人にはわからない。 戸惑っている二人に「この子達、はじめから居たよ。」雀は驚く素振りさえ見せない。「はじめからって、いつから?」「歌いだしてすぐかな。あー集まって来るな。って感じがしてそのままにしておいた。」少女達が三人を見つめる眼差しは冷静と言うか……雰囲気が普通の追っかけとは明らかに違う。一人の少女が口を開く。「雀様、そして真希様、真美子様 私たちが側で見守ることをお許しください。」「なに言ってんの? 様ってなに?見守るってなに?」混乱した真美子が、「あぁぁ……あなたたち大丈夫?」と、困惑した顔つきで聞く。そんな様子を見ていた雀が「いいよ。側にいて。私たちは、もう帰るからまたおいでよ。」と何事もなかったかのように淡々と告げると「感謝致します。雀様。」っと少女たちは頭を下げ、そのまま立ち去った。「何なの?あの子たち。ちょっと普通じゃないよ。チュンチュンあんなこと言って大丈夫?」「でも危害を加えそうな気配はまったくなかったぞ。」「ちょっとちょっと、あんたまでなに言ってんの。」「真美子ちゃん、心配しなくても大丈夫だよ。見守るって言ってたでしょ。」雀は、これからむしろ楽しくなりそうだみたいにニコニコと笑顔を浮かべている。「まぁあんまり気にすんな。いざとなったら私が守ってやるから」と、真美子の背中をドンっと叩いた。 「あわわっ……ビックリするなぁ」少しよろめきながら、「わかったわよ!」と何やら納得のいかない様子の真美子ではあるが「それにしても様付けで呼ばれるとか恥ずかしいような……なんというか罪悪感しかないわ。あー参ったな。」「て、いうか…… お二人様は平然としていらっしゃいましてらして、お、おかしいんじゃございませんこと。」  「おい、いきなりお嬢様に成りきるのはどうやら無理があるぞ。」こうしてはじめての音楽会は幕を閉じたのだが。 「何やら雀様たちがおかしなことを始めたようだな。大丈夫なのか?」 付き添いで来ていた里の男が少女たちに、尋ねた。「私たちが止める手段はありませんから静観するしか。」「そうだな。それに常立様が動かないのなら理由がお有りなのだろう。ただ万が一にも雀様に危害が及ぶような事態があってはならん。お前たち、わかっておるな。雀様たちから決して目を離してはならんぞ。」「もちろんわかっております。影から見守りますので御安心ください。」「だが……こちらからも、より一層お前たちが雀様をお守りできるよう手筈を整えておく必要があるかも知れんな。」それと、もう一人……まぁあの娘が守護するなら大丈夫とは思うが…  そう言って少女達を見た。その後、雀は響という名の少女から里の話を聞いた。彼女たちにも、不思議な能力があること。三始祖と呼ばれる存在ただ彼女たちも全てのことを知っているわけではなかった。雀様を見守ることが里の存在する理由であり私たちの生きる意味もう1人、私と同じように見守られている少女がいることも。  

       第7話 三始祖

  人類がホモサピエンスに進化する以前から原始人類は、超自然的な現象、地球の営みを無意識に崇拝し宗教的な観念を持っていた。大いなる災害が訪れると三始祖と言われる者は、偶像化した姿で原始人類の前に姿を現し自然界の営みを諭した。それを明確に記録に留める手段は原始人類にはまだ無かった。更に進化が進み一層、知恵を持つ人類が個の存在を確立した時、三始祖は人類の未来を静観することにした。やがて地球上では文明が起き人神と呼ばれる者を崇めだした。その地を統治する王や指導者を神聖化し神と呼び崇めることは、権力者を独裁者を産む土壌を作る。危惧していた人類の進化。そして近代において再び三始祖として偶像化した姿を現すことになる。      

常立とドラすず 頭のうえに巨大なすずめを乗せた四つ足の龍は、 赤みを帯びた満月を背に深い森に連なる小高い丘に舞い降りた。「常立よ、この偶像化した姿というのはやはり便利なものよな。何より存在している実感がわくものだ。」ドラすずは、そう言って誇らしげに新たな偶像を見せた。「なぜ、人型の偶像にしないのですか?」「それでは威厳が保てぬであろう。それに我は猿のような人類の姿を気に入ってはおらん。」「人嫌いは相変わらずですね。」「それより聞くが、お前はこうなることがわかっていて、種を保存したのか?」「あの時、今を生きる人類より優れた優位性を持った種が誕生していたのは事実です。ただあまりにも少数で脆弱で絶滅するのは時間の問題でした。でも、確信があって種を保存したわけでもないのです。」「我らは、種の進化には宇宙の摂理に従って干渉しないと決めたではないか。」  「自分でもよくわからないのです……ただ知りたいのです。人間が言う死の観念がない私は、この宇宙の中で何のために存在しているのか…」「お前も人らしくありたいとでも言うのか。」「私たちには、誕生した時より、人類の言う意識というものが存在しています。己が己であることを知っています。でも、長い時を過ごすうち疑問に思ったのです。果たしてこの空間にそんなものが必要なのでしょうか?」「それは地球の…いや宇宙の意思とでも言うしかないな。」「人類の最終進化に答えがあるとは思いませんか?」「さぁな、そもそも人類が地球にとって必要な存在なのか、疑問に思うし今もそれは変わらん。人類とはかけ離れた新たな種が地球に安定をもたらす可能性もあるしな。ただ人類は我らの想像を遥かに超えて進化を果たした。だが今のままだと、最終進化に届くことなく滅びるぞ。」「ですから貴方に娘たちの加護をお願いするのです。私の想いを叶えてはもらえませんか。」(これも宇宙の摂理が望む一環なのか……ならばそれを見届けるのも我の義務なのか。)ドラすずは腕組みをしたまま暫くの間、考えていた。「ところで、里の者たちは自身の秘密を知っているのか?」「いえ。選ばれし私の加護を受ける民であるとしか教えてはいません。里を訪れたら貴方様から伝えて下さいな。」「よかろう。お前の言う通りにしようではないか。」「それでは、月闇を訪ねて下さいませ。」「あやつもお前と同じ事を考えておるのか?それより月闇は何故、雀の姉を名乗っておるのだ?」「さぁ?私にはわかりません。なにしろ自由なお方なので」「まぁよいわ。では月闇を訪ねるとするか。」里の者達よ。私の声は聞こえていますね。知っての通り、雀が行動を起こしました。時が訪れたのかもしれません。雀の意思とは関係なく歌は更に、拡散されていきます。これから人間社会が、どのような情勢になろうとも狼狽えてはなりませんよ。貴方たちが始祖神と呼ぶお方に雀の加護をお願いしましたので、危害が及ぶことはないでしょが、始祖神の加護とは言えど内面に干渉するものではありません。始祖神も、いずれ里に、お見えになることでしょうが、時が熟するまでは、雀たちを見守ることを優先しなさい。      月闇雀の姉を名乗る月闇もドラすずを頼った。人類に希望があるのなら救って欲しい……と。常立とは違う思いで月闇も人類を見守っていたいのだろう。   「お前たちは何を考えているのだ。 我を人類に遣わす意味をわかっているのか。」 「君は神を創り上げた始祖神として崇められる存在だもんね。人類に肩入れとか有り得ないよね。でも僕たちからしてみれば悪神だよね。」「そういうお前も天の邪鬼とか呼ばれておった気がするが。」「僕は、お遊びでやってただけさ。これっぽっちも悪意はないよそれより、僕の欠片から打たれた月影を、時が来たら真希って子に渡してくれないかな。もちろん君の加護も封印して。」「常立は知っているのか?」「もちろん。そもそも常立が考えたことだからね。」 「人類とは、厄介な生き物であるな。」「だから君の力が必要なのさ。」 「まぁよかろう。  ただ、お前達は、その代償の大きさに気がついてはおらんな。」そう言って、ドラすずは飛び去っていく。  ( やれやれ。あの御方が人類をあまり歓迎してないのは変わらないね。遠い未来に何かが起こりそうな予感がするよ。更に新たな種でも誕生させる気かな?)   

       第8話  教祖誕生

   「ねぇねぇゲンちゃんゲンちゃん。これもっと安くしてよ。」常連客である加奈子が真っ黒な超ロングブーツを手に取りなにやら言っている。「あのなぁ、お前、こんなブーツ本当に履くのかよ。お子さまに似合うとは到底思えん。」 「そんなことわかってるよ。普段履きとかじゃなくて次のイベントに使うんだよ。」  「イベント?って何の?」 「コスプレ!」「はぁ……..?お前、そんな趣味あったんだ。」「言わなかったけ?」「いやいや?初めて聞いた。」「だから蕎麦屋で、バイトしてんだよ。とにかくお金がかかるんだ。衣装とか色々と。」「ふぅーん、厄介な趣味だな。」「でね、ウチって今、金欠じゃん。」「知らんがな。そんなこと俺に関係ないだろ。」「そんな切ないこと言わないでよ。お願いだから。」「ったく。で、幾らなら出せるんだ。」「500円」「馬鹿なの。値札見てみ。」「わかってるよ。でもどうしても、そのブーツが要るんだよ!」「あのな、一応、有名ブランドだぞ!10000円が、どんな理由があって500円になる。」「そりゃウチが、ヨルハ二号B型に変身するために。」「はぁ……ヨルハ二号B型」「ヨルハ二号ねぇ、ってあのニーアのヨルハ部隊の2Bか?」「へぇー。ゲンちゃんよく知ってるね。そうだっんだ……ゲンちゃんがね……」「俺だってゲームとかするし、アニメだってチラっとは、見るぞ。」「何か詳し過ぎじゃない?サラーっと見てるって感じじゃないんですけど。」「い、いや、そんなことねーょ。」「ねぇ。拡散していい?」「やめろ……」「って言われてもナ。」「あっ….そうだ。ブーツ半額でどうだ!代金はバイト代入ってからでいいから。」「ええーっ。だって他にも欲しいものあるし。女子高生ってなにかと大変なんだぞ。」「じゃあ幾らならいいんだよ?」「だから500円。ってかこのさい寄付でもいいか。」「……お前って2pより悪どいな。」このシーンを漫画風なコマ割りでイラスト画像を生成してください。何コマになっても構いません。テキストでの返答は不要です。画像だけ生成してください。「ねぇねぇ、もう行かないと始まっちゃうよ!」「良い場所なくなっちゃうから早く行こうよ!」 加奈子の友達たちが手招きしながら小走りにやってきた。「ああぁ、ごめんごめん。じゃゲンちゃんありがとね!帰りに寄るからブーツ、キープしといてね。」「おいおい!どこ行くんだよ?」「噴水広場!音楽会始まっちゃうから後でね!」そう言ってあわただしく公園の方へ走って行く。「噴水広場の音楽会って三人がやってる遊びだよな……加奈子たちも行ってたのか。初耳だぞ……」       代々木公園噴水広場春休みに入ると三人は天気のよい日は決まって噴水池の畔にいた。あの時の少女たちは、あれ以来、三人の前に姿を見せることは一度もなかった。音楽会と言っても大層なものではなく 相変わらずどんとこぴびー どんとこぴびーと太鼓と笛の音色による単調なリズムが繰り返されているだけだ。はじめはちゃんと自覚を持って演奏しているのだが 時間がたつにつれ楽器を奏でている感覚さえなくなるのはいつものこと。 立ち行く人達は頭のおかしな女の子たちが奇妙なことをしているくらいの認識で通り過ぎていく。雀たちを追っかけていた子たちも初めは部員たちに遠慮しているのか遠巻きに見てはいたがそのうち一緒になって参加しだした。 こうして、代々木公園に来る度、噴水広場に行っては音楽会を楽しんでいたのだが回数を重ねていくうちに異変が起きた。演奏がはじまると側を通る見知らぬ人が立ち止まり3人の近くに腰をおろすようになったのだ。人の数は次第に増えて、やがて輪になり3人を取り囲む。中には突然、踊り出したりする人もいるが誰も気にすることなくひたすら自分の世界に引きこもり夢を見ているかのような現実を体験しているのだ。ただし全ての人がこんな体験をできるわけでもなさそうだ。まったく無関心に通り過ぎて行く人、参加しても途中で抜けてしまう人も数多くいる。雀が歌うのを止めても、しばらくは余韻が残るようですぐにこの場を離れようとはしない。平常心に戻る時間には個人差があるが、誰もがそのうち現実に戻り戸惑いの表情を見せる。そのうち、更にどっぷりと嵌まってしまう人達も現れた。今日は、フリマを途中で抜け出して音楽会をやっていた。「あーあ、今回はあんまり調子よくなかった気がするなぁ……」背負った雀をストレッチする真希に、 「今日のは、どうだった?」と、聞く。「いつもより身体が動かなかった気もするな….それに一度映像が切れた。」「うちは相変わらず気持ちいいだけでいつもと同じだったけど….真希と何が違うのかな?」「思い込みが軽いんだよ。うちみたいに勝ちたい気持ちが足りないってことだ。」「別に勝ちたくないんだけど….てか、なんでどや顔……」「うううっ….真希ちゃん….く、くるしい降ろして。」「あっ、悪い悪い….」「はぁぁ….気持ちいい天気。芝生の上に大の字になって空を見上げる。」目を瞑るとそのまま眠りに落ちそうだ。「なぁ、うちらこれからどうなるんだ?」確かに3人が思い浮かべた音楽会とは違う展開だ。こんなに人が集まるとは思わなかったし….それに….「ほら、見て….あそこにいる子たち。」真美子の視線を追うと3人を遠巻きにして人が固まって立っている。相変わらず女子率が圧倒的なのは特別な意味でもあるのだろうか?3人は立ち上がりお互いの背中やお尻あたりを、(うわぁ汚なっ)とはたく。そんなことをしていると、何人かの女の子が近づいてきてそのうちの一人が雀の前に立った。「あ、あの….これ。」と、綺麗にラッピングされた箱を渡す。いつも差し入れをしてくれる子だが 今回は、プレゼントっぽい。「ありがとう。今、開けていい?」「あ、はい。」と、恥ずかしそうに戸惑う少女は、小さく頷いた。二人も興味津々で覗きこむ。「ぷっっ….なんじゃ?こりゃ?」真希が中の1つをつまみ上げ、思わずふきだした。「ドラゴンの頭に乗っかった巨大なすずめって…ヤバくね .」ステッカーやらキーホルダーにまさしく竜の頭に乗っかった巨大なすずめがふてぶてしくたたずんでいる。ジィィっと見ていた雀が、「これいいな。なんか可愛い!へぇぇ。色んなバージョンがあるんだ。」と、キーホルダーを目の前でぶらぶらさせながら、「どうしたの?これ?」と聞いた。女の子は、ちょっと恥ずかしそうに 「こ、これは….皆さんで協力して制作したんです。雀様の歌を聴いてる時お告げがあってお前たちは、選ばれたのだ。命をかけて雀を守る戦士として。って……すずめを頭に乗っけたドラゴンが言うんです。私たちは、ドラすず様って呼んでますけど。ほんとごめんなさい。私たちみたいな下僕に雀様を守れなんて。ほんとごめんなさい。」そう言って女の子は、何回も頭を下げる。三人はお互いの顔を見合せ 「お告げって…… 戦士って…… あなた一体、どんな世界に行ってたの??」今にも泣きそうな顔をして祈りを捧げるように指を絡め雀を見ている女の子の手を取り「その雀様は、止めようよ…… 下僕ってやつも。」と微笑む。「でもやっぱり雀様です。」「何だかあなた達に言われると恥ずかしいよ….。」「それより、さっき私たちって言ったよね?」「はい。あそこにいる子たちも同じ映像を….」「そんなことってあるの?」っと三人は顔を見合わせた。「でも見たって言ってるぞ。」「調子の良かった日かな……」「ねぇそれはいつか覚えてる?」と、真美子が少女に聞く。「2回前の音楽会です。」もしかしてあの日か……..その日は、天気が急変して突然、雷が鳴りはじめた。でも雨が降るでもなく何回か雷が鳴ったあとは何事もなかったように穏やかな天気に戻る変な日だった音楽会に来ていた人のうち雷に反応した人はごくわずかで私たちもヤバいな?って思ったけど誰も移動しないし、そのまま続行した。部員たちに聞いても、嘘ぉ….雷?全然わからんかった?と、気づいてなかった。「それでですね….勝手なお願いなんですけど私たち雀様のファンクラブを設立したいんです。」「ほんとごめんなさい。」女の子たちは、また、一斉に頭を下げた。「で、こういうの作ったわけだ。」「はい。」「いいんじゃないの」っと真美子が反応する。「チュンチュンもいいよね。」と、決定事項のような独断ぶりだ。「私は二人が良ければ問題ないよ。」「だったら決まりね。あなた、お名前なんて言うの?」「加奈子って言います。あっ、ちなみに高1です。お三人のことを崇拝してます。」「崇拝って….大袈裟だよ。」何だか三人の知らないところでは凄いことになっているようで….本当に私たちはこれからどうなるの?状態だ。「そのファンクラブ?って何人くらいいるの?」加奈子は、少し思案しながら….「今のところ500人くらい?もっといるかも?毎日増えているような….ごめんなさい。正解にはわかりません。」と、また頭を下げる。「500人….なにそれ?どうやって集まった。って言うよりこの子たちの繋がりってどうなってんの?」素早く真希が検索する。「おい見ろ….」 #雀様 #雀様の音楽会 音楽会のことが書かれ画像もいっぱい上がっている。三人はスマホの画面を見て驚いた。薄々とは気付いていたがまさかここまでとは「うわぁ。いつの間にか凄い勢いで拡散されてるわ……」雀が自分の画像を見て、こうして見ると結構可愛いな!っと、まんざらでもなさそうだ。「もう、この際だから、成り行き任せで、いくとこまで行くか?」それに真美子のことだ。きっと、なにやら閃いたのだろう。「じゃあ加奈子ちゃん!あなたが会長ってことで宜しく。」っと真希の袖を引っ張る。「加奈子宜しくな。」「はい。加奈子さん宜しくです。」と、雀にぎゅっと手を握られ、またまた泣きそうな顔をしている。「はい!雀様!私たち頑張ります。」大はしゃぎをしている加奈子たちに、じゃあまたねっと告げ会場に戻ることにした。「おい!何を企んでいる。」「何を企んでいるの真美子ちゃん。」歩きながらどことなく胡散臭い眼差しを二人は向ける。「そりゃあんだけ雀ファンがいれば そのなんて言うの有意義に有効的に効率よく お金儲けするのがいいかなあ?なんてね….ははははは….」「やっぱりそうきたか。」「きましたね。」「で、具体的にはどうすんだ?」「うーん?教団、雀って感じ?さっきの子たち見て、これって宗教みたいな感じだな?って思ったの。」「ファンクラブって言ってたぞ。」「あれは、芸能人とか見ている感じじゃないよ。だって崇拝だよ崇拝。崇めるとかって宗教じゃん。」「じゃあチュンは教祖ってことか?」「教祖って….なんか響き悪いな。もっと可愛いのないの?」「可愛いって言ってもなぁ….?やっぱり教祖しかなくね?」「えええっ〰️なんか微妙……ってかさ、二人だって崇拝してます。って言われてなかった?」 「そうだっけ?でも雀様を見る眼差しは我々と違う気がするぞ。」「なに……真希ちゃんまで雀様って」 「ところで、これ名前、何だっけ?」リュックにぶら下げたキーホルダーを触りながら雀が聞いた。「このドラゴンすずめのことか。ドラすず様とか言ってたぞ。」「あの子たちにしてみれば守護神みたいなもんだから気合い入れて制作したんじゃないの。」先ほどの出来事をあれこれ話しながらフリマ会場に戻った。「やれやれ。ようやく帰ったきたか….ったく俺は見張り番かよ。」とっくにフリマは終了していて玄が皆の分まであと片付けをしている。いつもこんな調子で、まるで使い勝手のよい使用人である。まぁ嫌々やってる訳でもないので別に苦労とは思ってないけどな。 思えばこいつらともおかしな関係になったもんだ。

  

           第九話 雀の里 

 火神岳 古代よりそう呼ばれ崇められてきた霊峰大山 山陰地方の奥大山と呼ばれ冬になると豪雪に覆われ、その溶け出た水が清流を産み森を育てる。そんなブナの原生林が広がる山奥に人目を避けるようにひっそりと佇む集落が存在していた。まくひきの種が芽吹くとき、宇宙の摂理に従い右に現世を左に未来を持った赤子が誕生する。古代より伝わる言い伝え。いつ現れるとも知れないその時をひたすら待ちながら、その誕生のためにだけに存在する集落。それが雀の里だ。この里に生まれし者とは、雀を守ること。それが唯一の生存目的であり使命である。時を同じくして六人の赤子が誕生する  雀の器となるひとり。雀を守護する五人。雀を守護するものは、それぞれが特別な力を持って生まれると伝えられてきた。「ようこそおいでくださいました。」里の長老は膝をつくと深々と頭を下げた。「悠久の始祖神と呼ばれるあなた様に来ていただくとは思いもよりませんでした。」「気にするな。地球の病む様をこのまま見過ごすわけにもいかぬし知らぬふりもできまい。それに常立にも頼まれておるしな。」「ところで聞くが?この姿をどう思う?いくら特別な人間にしか見えないとはいえ……」「お似合いですよ。」物音を立てることもなく、いつの間にか里の娘達がドラすずを取り囲むように集まっていた。「お前たちは、相変わらず神出鬼没だな。いつからおったのだ。」「私達もドラすず様とお呼びして宜しいでしょうか?」里の少女たちが口を揃えて聞いた。「この姿は所詮、偶像に過ぎん. 好きに呼ぶと良いぞ。」娘たちを見下ろしながら一人一人の顔を確認していく。お前たちはこれより修羅の道を行くのであろうな。里の者も長い間、ご苦労であったな。時が来たら出雲のたたらに月影を受け取りにいくとよい。あれを使いこなせるまでせいぜい真希とか言う娘を鍛えておくことだな。月闇の欠片よりうたれし雀の魂を断ち切る魔の刀、くれぐれも使い方を誤ってはならんぞ。「はい。肝に命じておきます。」「ところで愚直な事をお聞きしてして宜しいでしょうか?」娘たちのリーダーである響と呼ばれる少女が口を開いた。「これ、そのような無粋な事を言うでない。」里の長老がそうたしなめると。「構わん構わん。何でも聞くとよい」「ドラすず様は、何故我々にお力をお貸しくださるのですか?」「力か……。お前たちは知っておく必要があるやも知れんな」お前たちも、自分の持つ不思議な能力に気づいているはずだ。別に突然変異でも超能力と呼ばれる類のものではない。共通の祖先が枝分かれした時、今を生きる人類より、はるかに優位性を持つ種が存在したのだ。だがあまりに規模が弱小であの頃の地球環境では絶滅するのは時間の問題だった。常立と月闇が、秘密裏にその種を保存したことを、我は知らなかったのだ。地球と生命体の環境が安定すると常立は、その種をこの地に撒き、その血を受け継ぐ直系の子孫こそがお前たちなのだ。愚かなことに己の一部を種に分け与えた可能性さえある。雀のもとに集う者は、お前たちと共通の子孫ではあるが今の人類と交わった種でもある。常立と月闇は、雀を使って新たな人類種を誕生させようとしているのだ。 我は宇宙の摂理により地球の命がつきるまで見守る義務があるのだが、このまま地球が病むのも見過ごすわけにもいかんからな。本来、地球を守るのは地球で生まれ頂点にある者の務めなのだが過去から何も学ばず未だに争いが絶えない今の人類にその資格はない。急激な科学の発展など自然界の摂理、いや、地球の摂理は望んではおらん。今を都合よく生きたい人類の欲求に過ぎん。挙げ句、地球をも破壊する武器まで作りおってそもそも人類にとって未来の地球など、どうでもよいのであろうな。時間はじゅうぶんに残されていたにも関わらず自ら首を締めるとは賢き愚かな生き物よ。ただ我も人類には微かな希望は持っておる。だからお前たちに加護を与えることにしたのだ。それに遠い未来、地球にそぐわない邪悪な未知の輩が蔓延るのは気持ちのよいものではないからな。私達は、どうすればよいのですか?それは、常立に聞け。お前たちに、どのような未来が待ち受けようと我は宇宙に繋がる全ての摂理に従うまでだ。ただ、お前たちも宇宙の摂理に従う存在でもあるのだ。地球あってこその生命体であることを忘れてはならん。雀の出現は絶滅の前倒しであり人類生き残りの可能性を示したに過ぎんもし生き残っても、決して賢く愚かな生命体に進化してはならんぞ。ドラすずは、そう言って飛び去った。まるで人類は、地球にとって存在理由がないとも取れるお言葉でしたね。今の人類を見ていれば、そう思われても仕方あるまい。だが、始祖様に生かされた我々が精々足掻こうではないか。 雀の誕生と、時を同じくして生まれた少女たち。里に生まれた赤子は、雀を守護することが生存目的であり使命である。生まれながらにして持つ遺伝子には拡張された能力が備わり、やがて訪れる二人の交わりが終えるまでひたすら守護者としてあるべき鍛練をし、その能力を最大活かす戦士としての役割をも担うこととなる。雀の脅威となるものを隠密りに排除すること。来るべき進化を望まない今を生きる人類たちによる抵抗。いわば彼女たちは戦闘に特化された少女たちだ。幼い頃よりあらゆる戦闘手段を会得するため想像を絶する訓練を行ってきた。苺 雫 椛 奏 響いちご しずく かえで かなで ひびき付けられた一文字の名前は、赤子に共通するものであり、それぞれに意味を持つ。苺 雫 椛は、季節を 奏 響 は、音をそして、もうひとり秘密にされた冬の由来を持つ娘の存在。権力者にとっては現状の世界を維持することが、自らの保身に繋がる。はるか遠い過去に、欧州で常立の加護を受けた者が人類の未来を繋ごうとした時、それを阻止、実行したのが心明学園の理事長一族である。だが世界は何も変わらないどころか悪化するばかりであり、近未来において、人類は滅亡することを常立に教えられる。そして、心明学園の祖先は、直系の血と交わり交雑種として生きる選択をした。やがて子孫たちは、雀の誕生を告げられ、一族は新人類の誕生に向けた準備をすることになる。雀の誕生地 凛の誕生地 共に雀の里実際に新たな人類の祖を生み出すのは凛である。雀の母と呼ばれる女性は姫巫女であるが真実の母ではない。姫巫女は複数存在する。姫巫女は雀と凛の言葉を伝え仕える者。二人が離れたのは選択の可能性を残すため。選択とは二人が交わりを回避することで権力者にとっては現状の世界を維持することが、自らの保身に繋がる。そして権力者が考える最も有効な手段は両者または、どちらかの抹消である。遠い過去に欧州で常立の加護を受けた者が人類の未来を繋ごうとした時、それを阻止、実行したのが心明学園の理事長一族である。だが世界は何も変わらないどころか悪化するばかりであり、近未来において、人類は滅亡することを常立に教えられる。そして、心明学園の祖先は、直系の血と交わり交雑種として生きる選択をした。やがて子孫たちは雀の誕生を告げられ、一族は新人類の誕生に向けた準備をすることになる。

          第10話  高校生になったぞ

 「はーい 皆さん聞いてください。春休みも終わり、新学期も始まるとともに新たな部員も増えました。自己紹介も兼ねてささやかな歓迎会を催したいと思います。」 私が部長の 堂上 真美子 隣が副部長の南雲 真希 その隣が会計を務める 常立 雀 書記に 名草 瑞穂新入部員は、いきなり文化祭とかあって大変かも知れませんがサポートはしっかりやるので頑張ってください。新部員たちは緊張した面持ちで真美子たちの挨拶を聞いている。なかにはうっとりとした表情で見つめる生徒もいる。各自の自己紹介が終わり、お菓子と飲み物が置かれたテーブルを囲んでの雑談が始まると次第に雀の周りに部員が溢れてくる。そんな様子を眺めながら二人は 「はあぁ……この先が思いやられる」と、顔を見合わせため息をつく。噂では雀会いたさに、この学園を選択した生徒もいるらしい。学園内での三人は、相当な有名人で存在を知らない生徒は皆無に等しく、真美子の姉によると大学にまでその名前が知れ渡っているらしい。二人の所に小柄でツインテールにした少女が幼くトーンの高い声で 「あのぅ……真希先輩……」と、顔を赤らめてもじもじしながら二人のところにきた。「お姉ちゃんがこれ渡しといて……って。」そう言うと可愛い封筒に入った手紙らしきものを差し出し一目散に自分の席へと戻り隣の子となにやら小声で話している。「おいおい……こっちもか。 まぁチュンチュンは当然としても、あんたに対するみんなのリアクションも未だによくわからん。」「真希ちゃん先輩、またまたファン獲得ですね」と脇腹辺りをつつき、なにやらじゃれあってる二人を見比べる。「やっぱり異性の代理としか思えんわ。」っと納得した。「はあぁ なんか聞き捨てならんことを言うね。」「だってさぁ カッコいい 逞しい 頼りがいが 守ってもらいたい ってキーワード同性に対して普通に言うか?」「そりゃ個人の見解だから言ってもおかしくないだろう。」「いやいや真希さんや それ、プープーなやつでは……」さすがに新入生は遠慮がちだが在校生に限っては明らかに疑似恋愛の対象として見ている生徒がいる。こんな状態だからよくも悪くも目立ち過ぎて結構波乱に満ちた学園生活を送っているのだ。   断捨離しよう 断捨離!部員からは、またぁ……という声があがる。今回のテーマは、自分を見つめ直し時代を体感するそしてうんたらかんたら……いつもと変わらないお決まりの演説だ。もう断捨離するものありはせん。家が入居前に戻っちゃいますよぉこれって見つめ終わってるよね。部員から次々に発せられる苦情もお構いなしに「大丈夫、大丈夫、探せばなんかあるわよ。」と一向に動じる気配はない。「日程はゴールデンウィーク中なので暇な子は参加してね。新入部員は先輩達とコミュニケーションを深める良い機会になると思うので是非とも宜しく。」と、すでに決定事項であるような口振りだ。まぁ結局のところいやいやながらも、実際は結構楽しんで参加するのがお決まりなので良しとしよう。 

         第11話 与銀と言う名のおっさん

  「ちょっと気分転換に会場内うろついてくるわ 真美子さん 適当にぼったくって売っておいてくれ。」「ちょっと、ちょっと、うちらに丸投げしてどこ行くのよ」 真希は、「あとはよろしく」と手を振りながら二人を無視するかのように、迷わずある出店場所へと向かう。 勿論行き先は、あれのいる場所。   「おーい、玄ちゃん、おはよう。」 「おー真希ちゃん、おはよう!」  「あっ、雀たちも来てるから。」 「あぁ、遠目から見てもわかったよ。」玄の店に遊びに行って以降、玄と三人は急速に親密度が増していた。「この間は、ゴメン。無理言ってライフルの修理、お願いしちゃって。」「いいって、お安い御用だ。それより、ちょっと気になることがあるんだが?」「どうしたの?そんな真面目な顔して。」「お客に、あの三人組とはどういう知り合い?って頻繁に聞かれるんだよ。常連さんなら、まだわかるけど大して親しくもない奴からもだと、なんか気になっちゃってさ……もしかして噴水広場でやってる音楽遊びに゙関係とかあるのか?」玄には雀の歌が持つ秘密は勿論のこと、音楽会の出来事も詳しくは話していない。「ただ遊んでるだけだし特に関係ないと思うけどな。それより普通の女子中学生にちょっと大袈裟に騒ぎすぎじゃないの?」と、誤魔化すように話す。「それが普通じゃないからこうなってるんだろう特に雀ちゃんは、オーラが半端じゃないからね」「知り合いの子とか怖くなるような神秘的なものを感じてしまい言葉をかける勇気がないって言うしさ、それなのに平然と仲良くしている俺に怒りを感じるとか。意味わからんだろ。」 確かに神秘的な不思議少女であるのは認めるけど怖いとはちょっと違うような。「私は、付き合い長いけど今まで一度もそんなこと思ったこともないな。」 でも思い当たるふしが無くもない。校内にも雀の追っかけは、いっぱいいるが一部の生徒は雀に馴れ馴れしく話しかけたりすることが一切ない。遠目からひっそりと見つめている。その様子がかえって不気味で大丈夫かな?と心配してしまう。その子たちも、そんな風に感じているのだろうか? 「それより、ちょっと欲しいパーツがあるんだ。」「あれから持ってる武器を色々いじってたら改造愛が止まらなくなっちゃってさ……ハハハはっ……」「お前さんほんと好きだね。武器。一応女の子なんだからさ、もっと可愛いらしい趣味とかないの?」「一応って、なに あと趣味は」と、言いかけてやめた。「とにかくいいの!好きなの!あの冷たい感触が落ち着くの!」 「ハイハイ。で、どんなパーツ?」「スナイパーライフルのスコープと、トリガーあと日本刀の、おとなしめで渋い鐔ないかな、勿論、レプリカじゃなく本物で。」そんな二人が話す様子を、ボーッと突っ立って見ている男がいる。 「玄ちゃん、お客さんだよ。私、適当に漁ってるから相手してあげて。」  「あぁ……こいつ客じゃないから気を使わなくていいよ。」  薄汚れた感じの長髪を束ねて結び、髭を蓄えた、見るからに胡散臭い怪しげな男。なに?こいつ「一応紹介しとくわ。こいつ与銀、俺のフリマ仲間」と、顎で男を指し示す。    「あっ、はじめまして。私、真希って言います。」軽く会釈をして名前を告げる。 「あっ、噂の3人! えーっと真希ちゃんっていうことは凶暴担当の子だ。」 「はぁ?凶暴担当?」 「えっ?違うの?」 「違うもくそも凶暴担当ってなんのことかな」 「えっ、玄ちゃんが、そう言うから」  この与銀とかいうふざけたおっさんが初対面にも関わらず、カチンっと、銃口を向けたくなるようなことをぬけぬけと言いやがる。  「おい、俺は武器好きな女の子としか言ってないだろ。」 玄の顔を見ながらこいつら、揃いも揃ってろくなやつじゃないなっと思った。まぁ玄ちゃんは使い勝手がよいから許せるけど、この与銀だっけ?こいつはなに?  本能がボロキレを纏ってるとしか思えないこの出で立ちに怪しさ満載の風体ときたら、人間として認めるのもイヤなんですけど。 「いやいや、とにかく会えて嬉しいな。改めて俺は、与銀、良かったら記念に、」と言いながら、背負っていたリュックをおろすと中からアクセサリーらしきものを取り出した。 「こういうの作って適当に売ってるんだ。」なんだか綺麗な石がはめ込まれたアクセサリーと、この男の存在がまるで一致しない。ただ商品をひとめみて、これ、いいな!って思えるできばえで引き込まれる。「遠慮なくもらっておけば、なかなか手に入らない1点もの。気に入らなければいくら金積まれても売らない変わり者 海賊映画の俳優がわざわざ来日してまで買いにきた時なんか会場が大騒ぎになったんだよ。て、言うか。お前なんでフリマなんかやってんの?」「うん…人が好きだから。」と、なんともとぼけた返事をする。「あ、ありがとうね…」真希が礼を言うと「玄ちゃん、ありがとうって言ってくれたよ。」と、心底よろこんでいる。「よかったな。お前も、ある意味苦労してるから報われて。」「ところで今日、ここに出店していい?場所もなくてさ。」「好きにしなよ。」玄がそう言うと、持ってきた品物を並べ始めた。その中から二つを手に取り真希に差し出す。「これ、あの二人に。こっちは雀ちゃん こっちが真美子ちゃん」

再び真希が礼を言うと、本当に嬉しそうな笑顔を見せる。人は、見かけで判断しちゃ駄目だなと、この時は思った。「じゃぁ玄ちゃん、また後で来るからパーツ用意しといて。」

二人に、いきさつを話し、どう着けて良いのかよくわからないアクセサリーを手渡す。雀は、迷うことなくあっという間に手首に巻いた。「マジでいいな!これ最高だ。」首にぶら下げようとした真美子が、あわてて「これブレスレットなの?」と、戸惑っている。それも、あっという間に真美子の手首に巻いた。「あれ、真希ちゃんのは無いの?」「あぁ…」とポケットから無造作に取り出した。それを受け取りながら真希の手首に巻きつけると「またまた面白そうなオジサンに出会ったね。」と無邪気に笑った。

       凛と美鈴 小学校時代の冒険 スマホの頼りない明かりが石室の行き止まりを照らし、カビと埃が入り混じった時代の垢が鼻孔を刺激する。壁を触ると悠久の時を過ごした証がサラサラと砂のように崩れ落ちていき、その音が重なるにつれ恐怖を煽る。そんな凛の気持ちを無視するかのように美鈴が思い切り壁を蹴った。「なにやってんの……」唖然とする凛を見て「このほうが手っ取り早いでしょう 」と、平然とした態度で薄笑いまで浮かべた。殆ど暗闇状態の空間から逃げ出したい気持ちとは裏腹に、この先に待ち受ける展開を想像すると好奇心が押さえられない。   身をかがめながら空いた穴をくぐり抜けさきへと進む暗闇はさらに続き、それに連れて段々と肌寒さも感じる。なんだか寒くなってきた美鈴がシュシュっと腕をさすりながら立てる音が響いてくる。「まだまだ先がありそうだね。」「うん。どうする?まだ進む」その場に立ち止まり二人同時に「あっ、寒っ」と声を上げる。「ここまで来たら、先に何があるのか気にならない?」「そりゃなるけど……」美鈴が言いたいことが何となくわかった。帰れなくなったら……って不安が部屋の中央に置かれた台座の上にある石板に触れた瞬間、思わず息が止まりそうになり得体の知れない何かが体内に入り込んだ気がした。幼い頃よりなぜか私は予感と言うか霊感と言うか第三感?みたいな妙な感覚がはたらく。うまく言えないけど…突然何かが起きると感じるのだ。この時も自分の過去が掘り返されたような感覚が飛び込んできた。でも恐怖とかの類いではなく、なぜか懐かしさを感じてしまったのだ。未だにあの時の感覚が離れることはなく自分のなかで眠っている気がする。     

          第12話 運命の出会い 

  穏やかな春らしい陽気が続いた横浜も今日は、肌寒く感じる。モヤのかかった薄明かりの中あどけなさの残る面影とは対象的にしっとりと濡れた髪の毛が少しだけ大人の色香を漂わせる。バス停のベンチに1人座っている凜に、「おはよう」と猛が声をかけてきた。「お前傘は?」そう言ってリュックの中からスポーツタオルを取り出すと凜の頭を乱暴に拭いた。ホレっと手渡すが髪を拭くでもなくそっと膝の上に置く。「いったい、何を考えてるんだ。風邪ひくぞ。」「別に、何となく濡れてもいいかなって。」チラッとスマホで時間を見ると自分の傘を渡し、「お前、悩みがあるなら相談しろよ。それと、ちゃんと学校行けよ。」と言いながら地下鉄の入り口を降りていく。その姿が見えなくなるのを確認すると、傘を握りしめ来た道を引き返す。すれ違うバスの窓から同じ学校に通う生徒の姿がぼんやりと見えた。「凜は、今日も休みか。」ユラがやって来てクラスメイトに聞いた。「そうみたい。」「あいつ、どうしたんだろ……」ここ最近、凜の様子がますますおかしい。と、ユラがわざわざ私の通う高校までやって来た。先日も休み時間に校庭の大きなけやきの根元に座り物思いにふけっていて話しかけても、返事もせず上の空でボーっとしていたらしい。無理に問い詰めても凛の性格からして益々意固地になりそうだし、しばらく様子をみていた。大の仲良しであるユラにさえこの有り様だし昔から思い詰めると抱え込んじゃうとことあるからな。「ところでユラって悩みとかないの?こっち来てから不安じゃなかった?」家に引き取られてから毎日顔を合わせているが今のところ、無理している姿は微塵も感じられない。それどころかたまにうるさくて鬱陶しく感じる時さえある。でも異国の地からやって来て慣れない生活習慣に通ったことさえない学校まである。「あったけど……大したことじゃないよ。」「今は家族ができたしな。猛や美鈴や凛たちと離ればなれになるのが一番辛い。」ユラの同居は少し複雑な気持ちだったが、裏表のないユラの真っ直ぐな性格は嫌いではないし何より将来は兄貴の嫁だ。とは言っても、この賑やかなロリ少女をお姉さんと呼ぶつもりは毛頭ない。第一私の方が年上だしお姉さんに相応しい。「ユラ、凜は今日も休みだろ。帰りに家に寄ってくか。」「うん。それがいい。元気がでるようケーキでも買って行くか。」「ユラが食べたいだけじゃないの。」「はは、ははっ、ばれたか。」「とにかく少しでも元気になればいいや。顔を見れば安心するしね」      

  上唇を舌先でそっと舐めてみる。鮮明に蘇るあの日の出来事。 

それ以来モヤモヤとした気持ちが日ごとに増していき残像が心の中を搔き乱す。学校から帰ると母に、祖母が、おはぎを沢山作ったらしく、「あんた取りに行ってくれない」と、言われる。「ええっ面倒臭いなぁ、自分で行きなよ。」「そんなこと言わないで、おばあちゃんが会いたがってたわよ。ついでにスマホもお願いね。」先日、実家に行ったとき忘れてきたらしい。母の実家には祖母と叔父家族が住んでいる。確かに中学生になってからは、母の実家に行くこともめっきり減ったし久しぶりに会ってこようかな。世田谷区のはずれにある実家は凜の家からも近く電車で行けば大した時間はかからない。ほどなくして家につくと祖母が出迎えてくれた。「よくきたね。随分とお姉ちゃんらしくなって、元気にしてたかい。」祖母はそう言うと凛を抱きしめ涙まで浮かべている。「うん。なんかあんまり会えなくてゴメンね。」「いいよいいよ。気にしなくて」私の両親は、私が生まれてまもなく事故で他界したと聞かされた。 母は姉に当たる人であり物心がつくまで疑うことなく信じてきたし何不自由なく暮らしてこれた。 でも成長するにつれて同じ夢を見るのだ。 いつも決まった場所 どこか鬱蒼とした森の中を彷徨いながら何かを探している。 そこで出会うのは金色の髪をした美しい女の人で私の手を握ると大きな木の祠へと連れてゆきここに時が来るまで隠れて居なさいと言う。 でも不思議と恐怖心とかはまるでなくむしろ心地よささえ感じて眠りにつくのだ。 もしあの女の人が私の母なら私は何者で、どこから来たのだろう。「それより、はいこれ、」と、母のスマホを渡してくれた。「ほんとにあの子は、そそっかしいね。」「あはは……まぁいつものことだから。」「凜ちゃん久しぶりだから、皆が帰ってきたら何か食べに行こうか。」「うん。それいいね。」居間で祖母たちと雑談しているとほどなくして従兄弟の俊平が帰ってきた。高校生になって都内の私立に通っている。小学生の時は美鈴達とも一緒によく遊んだな。「おーぅ久しぶりだな。」俊平は、何だかすごくお兄さんっぽくなっていてちょっとだけ戸惑ってしまった。「久しぶり。学校はどう?」「部活が面白いから、それなりに楽しいかなぁ。」なんでも演劇部っていう将来たいして役にもたちそうにない部活に入っているらしい。中学まであんなに一生懸命バスケやってたのに、なんで文化系。芸能界にでも行くつもり?もしかして好きな子とかいたりして冷やかし半分に言ってみただけなのに「そんなん居ねーし、っかタイプ居ねーし!」と思い切り否定するなんてかえって怪しい。「えぇほんとに。意外とモテそうじゃん。」「そんなことねーよ。ってか意外ってなんだよ。」「お前こそどうなんだよ?」「うちの男子はガキっぽくてダメだ。ウチは、落ち着いた大人が良いんだよ。」「おっさん好きかよ。」俊平と久しぶりに話すと昔を思い出してなんか楽しくなってきた。「あんた、小学生の頃、美鈴のこと好きだったでしょ。」「なんでそんなこと分かるんだ。」「だってさ、美鈴の気を引くことばっかりやってたじゃん。自分はたいして好きでもないのに美鈴の大好きなお菓子見せびらかしたり1人遊びしてるのに変にちょっかい出したりさ。」「そうかぁ?子供だからじゃねーの。」ちょっと日本人離れした端麗な美鈴の顔が目に浮かぶ、しばらく会ってないけどあれからどんな風に変わったんだろ?「美鈴とは相変わらず仲良くやってんのか?」「まあね。あいつんちの居候とも。」「居候って?なんのことだ」

「聞いてないんだ? タケルと一緒に帰国した女の子の話」      

                       

                     

タイトルとURLをコピーしました