story-2

    

       集う子 

 あれから雀の歌を検証することに夢中になり外出することもなく冬休みを過ごしていたのだが、結局、真美子には特別な映像が見えることは一度もなかった。 

気分転換もかねて、三人は久しぶりに原宿に出かけることにする。 

電車の中でも 「いったい真希と何が違うのかな?」

「だから感受性が足りないって言ってるだろ」

「真希に感受性とか言われたくないんだけど……あんた戦ってるだけじゃん。」

「チュンチュンには何か思い当たることはないの?」

「わかんないよ~私にも真希ちゃんみたいな戦闘場面は歌ってるとき出てこないもん。」 

 何だか、釈然としない気持ちを真希にぶつける。

「この際、あんただけ頭の中がおかしいってことにしておくか。」

そんな三人の会話を時々ねっとりした視線を向けて見ている子たちがちらほらいる。

良し悪しは置いとくとして、三人は何処にいても少々目立つ存在だ。

それは学園内でも同じであり色々と問題を起こす原因でもあるのだが。  

 特に何も買うでもなく街中をぶらついていると、お決まりのパターンがそのうち訪れる。 

「なんだが後にくっついて来てる子がいるんだけど。」

振り返ると何人かの女の子が明らかに三人の後を一定の距離を保ちながら歩いている。

三人が立ち止まれば同じように止まり決して追い越そうとはしないし、話しかけてくることもない。 

「あーあ、いつもの感じね。 電車からずーっとだ。」 

「駅についてからは人数が増えたね。」

真美子と雀は、特に気にするでもなく平然としている。 

「チッ…これだからチュンと一緒に人混みに来るの嫌なんだよな。」 と、真希が舌打ちをしながら振り返る。 

「今日は、あんた狙いの子もいるかもよ。チュンチュンは、リアルにアニメから飛び出してきた不思議キャラみたいなもんだからわかるとしても、あんたの女子を惹き付けるキャラは未だに理解できないわ。」 

「やめろよ。うちだって意味不明なんだから……」

 そう言うと真希が、つかつかと女の子たちの所に行き、なにやら言っている。

「別に被害も無いんだからほっとけばいいのに。真希ちゃんはホント気が短いよね。」

 雀が、やれやれといった感じで、その様子を見ている。 

「はぁ?あいつ、何か 受け取ってないか?」

「だから毎回こうなるんだから、ほっとけばいいのに、何でわざわざ行くかな……荷物増えるじゃん。」

( こいつもこいつで相変わらず感情歪んでるな……)

両手に紙袋をぶら下げて帰った来た真希に

「お疲れ様でした。真希ちゃん先輩はホント有能ですね。」

 と、嫌味ったらしく言う雀に全く動じることなく、

「チュンこれ、お前さんへの貢ぎものだ!」と、紙袋を渡す。

「あれ、真希ちゃんのは?」

「い、いや、うちには特に何も……」

 なにやら怪しい……

「あんたさぁ少しは」と真美子が言おうとしたら早速お決まりのパターンその2がやってくる。

いかにも胡散臭い男が近付いてくると

「ちょっといいかな。時間とらせないから」と言うと雀の顔を覗きこみ

「君、すごく可愛いね。その目はカラコン?」と聞く。

「よかったら素顔見せてくれないかな」怪しい者じゃないからと名刺を取り出す。

「あー、急いでるんで、いいですか!」っと雀が歩こうとすると、

「ちょっと待って、ほんの少しでいいから話聞いてよ。」

と腕を掴んだまま名刺を渡そうとした時

真希がその手を振りほどき名刺を取り上げて投げ捨てた。

「おい、嫌がってんだろ。」

と雀を守るように男の目の前に立ち塞がる。

「何、するんだ!」と、男が近寄るや、

腰辺りからピストルらしきものを抜き出すと男の喉元に突き付け、

「どっか行けよゴミが!それとも一回死んどくか。」

「ガチでぶっぱなすぞ。」

と 、圧し殺した冷めた声で言うとあまりの迫力に悪態をつきながら逃げてしまった。

その様子を先ほどの女の子たちが見ている。

そのうちの一人が眼をうるうるさせながら 

「あーぁ カッコいい…」と今にも崩れ落ちそうな姿勢で呟いた。

「バカめ。マジムカつくわ。」と、指先でくるくるとピストルを回している真希に

「あーぁ、またまたやっちゃいましたね、真希ちゃん先輩。」

「あー、やっちゃったね……ところで、あんたさぁ……いつも、そんな物騒な物、持ち歩いてるの?」

 真美子がくるくる回るピストルを止めて言う。

「いや、今日が初めてだけど。それより見ろ!この美しいフォルム。ヘッケラー&コッホのM2カスタム 欲しかったんだ。いいだろう!」と自慢をはじめた。

「そういうことか」と女の子の方をチラッとみる。

「そのヘッケラーなんちゃらはどうでもいいけど、そんなの持ち歩いてたらお巡りさんに捕まっちゃうよ。」

「え、ただのモデルガンなんだけど」

「それでもダメでしょ」不満そうな顔をして何かを言いたそうにしている真希に

「巻き添えになったらイヤだから早く仕舞いなよ」と強い口調で言った。

「わかったよ、また後でな。」

 そう言うと愛しそうにリュックにしまう。         

   断捨離しようか

 代々木公園沿いを渋谷方面に向かって歩いていると公園前にある多目的広場が人で溢れやけに騒がしい。

入口に近づくとフリマ開催中の旗が見えた。

以前からこの場所でフリマが開催されていたのは知っていたが別段興味もなかったし、それが目的で出かけることもなかった。

暇だったこともあり、フリマを覗いていくことにした。

道路を横断して真向かいの広場に向かう。

「うわぁ……何この人だかり。」三人は、思わず顔を見合わせる。

 奥の方までびっしりと埋め尽くされた出店スペースに大勢の買い物客。入り口付近で、この人だかりってことは中はもっとすごいのか?

かき分けるように進むと何やらひときわ大きな声が聞こえてくる。

「はいはい、掘って掘って また掘って皆さま掘りまくってくださいな!どれでも百円、何でも百円」と、めちゃくちゃ威勢の良いお姉さんが声を張り上げている。

その姿につられお客さんがブルーシートの上に富士山のようにてんこ盛りに積み上げられた品物を先を争うようにして漁っている。

「なんだが、すごいね……」その姿に圧倒された真美子が思わず真希の袖を引っ張った。 

「前からこんなだった?」

「覚えてないから……よくわからん」

「あれっ チュンは?」いつの間にか雀の姿がない。

まさか迷子になったのかと?辺りを見回すが人混みに埋もれて確認できない。

 さすがに中学生にもなると大丈夫と信じたいが少し心配になってくる。何しろあのキャラだ。変なのに捕まってないといいけど。

そんな真美子の心配をよそに

「お願い、もっと安くして 」っと特徴のある聞きなれた可愛い声が聞こえる。

「あっ!いたいた。何やってんの?」

「今、お兄さんと交渉中」

 見るとしゃがみこんでサングラスらしきものを手にしている。

「幾らなら買えるの?」困ったような顔をして雀に聞くお兄さん。

「だから百円」

どう見てもそんな値段とは思えない綺麗なサングラス。

よく見ると有名なブランドロゴが

「これ正規品なんだけど……」

「お願いお兄さん……どうしても欲しいの」と、じっと見つめたまま品物を離さない。

「参ったな……」しばらく考えた挙げ句

「まぁ姉貴のやつだし百円でいいか、君、可愛いし」と妥協してしまった。

「お兄さんありがとう」っと雀ににっこり微笑みかけられると

「いやいやこちらこそ」 

 こちらこそっていったい何の挨拶だよ……っと思ったが、

なんともだらしない顔を晒しているお兄さんに似たようなサングラスを手に取り

「これはいくら?」と真美子が精一杯の微笑みを造りながら聞く。

あっさり三千円と言われて

「なんなの……この差別は」

「まぁ気にするな いわゆる雀マジックと言うやつだ」 と、たいして慰めにもならない事を真希が言う。

「どう似合う?」と雀に聞かれ

「あぁフレーム大きいし顔わかんなくて良かったね!」と適当に答えた。

 会場内を一回りしてめぼしい物を見つけると雀マジックを連発し、そこそこの戦利品を手にした雀は満足気だ。

それにあやかって自分たちも買い物をする。

「意外と、楽しかったね」

「ねぇ今度うちらも出店してみない。」と、真美子が提案すると

「やりたい!やりたい」と雀が即答する

「まぁ少しは小遣いの足しになるかもだしな」っと真希が言うと

「だよね!」っと真美子が嬉しそうにニコニコしてる。

金が絡むとこいつの人格が変わるのは知っていたがきっと何やら閃いたに違いない。

「まぁ楽しければ何でもいいか。」

 こうして断捨離という名目のフリマ遊びを決行すべく計画を練った。

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